最終年は成果発表の年度と位置づけていた。昨年度秋から継続していた米国での長期海外研修中に、平成28年4月に開催されたInternational Network for Social Network Analysis (INSNA) Sunbelt Conference 2016のポスターセッションで発表した。帰国後、9月には社会情報学会全国大会、11月には情報文化学会全国大会において口頭発表を行った。 発行の遅れていた黒潮町および奈半利町での社会調査報告書については9月末までに完成させ、11月中に関係者および希望者へ郵送した。これらの報告書は大学HP(http://souls.cc.kochi-u.ac.jp/?&rf=5498)においても公開している。さらに平成29年3月末に科研費研究成果報告書を完成させた。なお、申請時に構想していたシンポジウムについては関係者との調整が困難と判断し、開催を断念した。 本研究成果の意義は、防災準備行動と地域情報行動およびパーソナル・ネットワーク構造との関連性を明らかにした点である。具体的には性別や年齢、地域メディア利用やパーソナル・ネットワーク特性が防災準備行動と関連していて、高齢な男性のほうがより防災準備を行う傾向にあり、女性や若年層が“防災弱者”にある傾向が見いだせた。 特に防災準備の高低に関わる要因のいくつかを特定できたことは、防災強者と防災弱者とそれぞれの特性にあった防災コミュニケーション戦略の構想を可能にするであろう。また、調査結果からは太平洋沿岸郡部コミュニティにおける地域コミュニケーション行動の実態把握を実現した点も重要であると考える。地域情報流通において広報誌やクチコミの重要性が再確認された。本調査研究におけるこれらの知見は今後の地域防災のコミュニケーション政策に資すると考える。
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