研究課題/領域番号 |
25330403
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
福田 智子 同志社大学, 文化情報学部, 准教授 (50363388)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 平安文学 / 伝統文化 / データベース / テキストマイニング / 和歌 / 伊勢物語 / 古今和歌六帖 / 伝本 |
研究概要 |
同志社大学今出川図書館蔵『伊勢物語御歌かるた』を対象に、影印と電子テキストとを結んだデータベースの設計を検討した。その成果の一部は、文化情報学部の演習系授業(ジョイント・リサーチI・II:情報科学技術を用いた日本古典文学の文字列解析。深川大路氏との共同指導)にも用いた。 一方、筑紫平安文学会において、〈好忠百首〉のうち、ほぼ半数の歌の1回目輪読を完了した。また、矢野環氏の指導のもと、『源氏千種香』を読み解き、実行不可能と判断される御法香を除くすべての組香を実際に行った。その成果は『社会科学』に3回にわたって掲載した(矢野氏、岩坪健氏との共著)。そして、『古今和歌六帖』所収出典未詳歌注釈稿を、『文化情報学』および『社会科学』に各1回発表した。さらに、文化情報学部蔵無名歌集(同志社大学・同志社女子大学蔵書検索システムDOORSには『いろは和歌集』の仮称で登録されている)については、文化情報学研究科における授業「日本古典文学情報特論1」でも採り上げ、翻字と解題を『文化情報学』に2回にわたり掲載した。 なお、富士ゼロックス京都株式会社文化推進事業部のCSR活動(伝統文化推進をテーマにした社会貢献)および株式会社大石天狗堂と連携し、最先端のコピー技術と、かるた作成の伝統的技術を駆使して、前掲の『伊勢物語御歌かるた』を復元複製した。これにともない、贈呈式・閲覧会を、京田辺校地のオープンキャンパス(7月28日)において行った。また、復元複製したかるたは、ローム記念館学生プロジェクト(歌留多ラボ)と連携し、11月3日、4日のクローバー祭において、一般来場者とのかるた取り体験に利用し、同時に、文化情報学部独自企画として展示した。さらに、ラーネッド記念図書館の「お正月企画Co☆labo+ 歌留多の世界~江戸時代の遊びと『伊勢物語』~」では、かるた作りワークショップとかるた展示を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたデータベースの設計は、深川大路氏(情報科学)との連携により、基本構造はほぼ決定している。コンテンツ(文学作品)の研究も平行しておこなうことで、より利用価値が高く、研究者のみならず幅広い利用層が見込めるデータベース構築に近づいているのではないかと考える。 文学研究自体も、『古今和歌六帖』の出典未詳歌や「好忠百首」の注釈、同志社大学蔵無名歌集(仮称『いろは和歌集』)の翻字と解題、『源氏千種香』の翻字・注釈・考察といったように、着実に成果を発表している。 また、企業や学生とともに取り組んだアウトリーチ活動も、大学内部だけではなく、地域の人々への社会貢献として、ひとつのあり方を示すことができたのではないか。
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今後の研究の推進方策 |
データベース構築に関しては、これまでどおり、深川大路氏を中心にして実際の作業をおこなっていくが、プログラム作成には手間と時間がかかるため、深川氏のもとで作業補助をおこなうアルバイト学生を確保して作業を進める段階にきたものと考える。 また、文学作品の電子テキスト作成を、これまで以上に迅速かつ正確におこなうため、くずし字・変体仮名が読める学生をできるだけ多く育成・確保し、作業にあたるようにすべきであろう。 さらに、これまで開発した文字列解析ツールの不具合の修正や、新たな機能の追加を試みるため、ツールを実際に用いて実験をおこなうアルバイト学生も確保したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、データベースの設計方針を定めるとともに、文学作品の翻字・読解といった基礎作業をおこなったが、学生アルバイトによる作業を、基本的におこなわなかった。これは、本共同研究が、高い専門性を有する共同研究者の知見を収集する段階であったからである。正確なデータを能率的に作成し、研究者のみならず、幅広い層に利用されるデータベースを作成するためには、必要不可欠な作業であったと考える。 次年度からは、今年度作り上げてきた研究方針のもと、大学・大学院の学生アルバイトを雇用する。これにより、コンテンツとなる電子テキスト・画像などのデータ作成・整理や、データベースの枠組みの作成、コンテンツの格納などの作業を、具体的に進める。
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