研究課題/領域番号 |
25330405
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
青木 恭太 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00125808)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 読書困難 / 学習障害 / 読書特性評価 / 読書援助 |
研究概要 |
日本語文提示システム「よもーヨ」の機能の拡充を行い,「よもーヨ」利用者の読書行動を自動的に記録解析できるようになった.拡張した機能は,利用者の読書状況映像および音声を記録する機能である.最近のPCでは,カメラおよびマイクは内蔵されているものが多く,ハードウェアの追加なしにこの機能拡張ができた. 単一利用者環境では,音声記録から読書状況を容易に推定することが可能である.しかし,「よもーヨ」が学級の中で多くの生徒により同時に利用される状況では音声記録には,他の生徒の音声も同時に記録され,読書状況を推定することは困難となる. 映像観測は,その処理量は多くなるが,利用者がPCの前で利用するので,利用者の顔映像を容易に記録できる.顔映像から口の動きを検出することにより読書状況が推定できることは確認できた.映像を用いる読書状況推定は,周囲の環境に依存せず,多人数の生徒が同時に「よもーヨ」を利用している通常の教室環境においても有効に利用者の読書状況の推定が可能となる. 小学校において,ほぼ全生徒を対象とする「よもーヨ」利用読書実験を実施した.その結果,「よもーヨ」で計測される利用者のシステム操作記録から読書困難生徒の検出,読書困難要因の推定などが行えることを確認し,研究会および国際会議において発表した. また,教師が行う読書能力評価とシステム操作記録を比較すると,教師の読書能力評価の低い生徒においては,読書能力評価の低い生徒では,読書速度が低下する.一方,読書能力評価が通常以上の生徒に追いては,読書能力評価と読書速度には関係が見られない.このことから,教員は,読書速度とは異なる要因で読書能力評価が通常以上の生徒を評価していることが明らかとなる.現在,「流暢さ」がその要因であろうと予測し,前期の詳細な読書状況計測を実現し,実験を行おうとしている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
広範な生徒を対象として,「よもーヨ」利用実験を実施することができた.ほぼ1小学校の全生徒(1年を除く)を対象として,初見音読状況を記録し,教師の読書能力評価と比較対照しての読書状況と教師の読書能力評価の関係を明らかとした.読み速度から読書困難を示す読み位置を自動的に検出することが可能となった.検出した読み困難位置の性質に基づいて,その利用者が示す読み困難要因を推定する手がかりが得られる.また,教師がABCDの4段階に読み能力を評価し,その評価と読み速度の関係から,読み能力が低いCとDについて,読み速度において読み能力の高いBと明確な差があった.また,読み能力の高いAとBの間では,読み速度に関しては差がなく,教師の読み能力評価が読み速度以外の流暢さなどに依存していることが明らかとなった.これらの知見を電子情報通信学会教育工学研究会2報,LD学会大会,国際会議ACE(Asian Conference on Education)において発表した. 「よもーヨ」の能力拡張においては,読書状況記録と評価において大きな進歩が実現された.特に,映像観測に基づく読書状況認識は,多くの生徒が同時に「よもーヨ」を利用する通常の教室環境においても有効に動作する読書状況認識方式であり,多くの学習支援システムなどで学習支援状況の把握に利用可能である.25年度には,TheEyeTribe(安価な視線センサ)やLeapMotionセンサ(安価な手指3次元センサ)が出荷され,これらのセンサを利用して読書状況をより詳細に認識する方策を検討した.
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今後の研究の推進方策 |
初期の26年度計画では,PCのみでなくタブレット端末において「よもーヨ」を実現し,より使い易い形態での実現を目指していた.タブレット端末には,大きくはiPAD系とAndroid系があるが,学校現場においてどちらの系統が良いかは,大きくは読書のみでなく各種の教育支援ソフトなどの充実度などに依存する.また,教育現場のみでなく学校の情報処理環境を選択決定する教育委員会などにより利用可能なタブレット端末などが決定されることになる.26年度には,実現環境とは関係なく,システムの仕様や機能は決定実現できるので,タブレット環境への移植を行いつつ,機能とくに読書状況観測と測定に関する機能の拡充とその機能の試験を重点的に行う.また,読書状況観測・測定結果を利用した,利用者への利用指導と提示方法の自動調整を実現することを目指す.普通学級では,教員の数は生徒への個別指導を頻繁に行うには少なく,「よもーヨ」などの支援機器(ソフトも)の利用においても,教員の十二分のサポートを得ることはできない.その状況では,システム自体で教員が行うサポートの一部でも自動的に行うことで,教育支援システムの実質的有効性を大きく拡大することができる.単純に,「よもーヨ」の利用者に提供する機能を拡張するのではなく,利用者が一人でシステムをうまく使えるようにするための利用援助機能を拡張することが,実普通教室環境で有効な教育支援機器・方法を実現することになる. 顔映像観測に基づく読書状況詳細観測・計測により利用者を支援する方策を中心に研究をすすめる.
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次年度の研究費の使用計画 |
発表国際会議が日本国内開催であったため,剰余が生じた. 国際会議発表費用の一部として,使用する.
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