最終年度は,受講者行動と理解度との関係解析を検討した.講義中の受講者映像の取得が困難となったため,e-learningシステム上で取得できる行動ログを利用した.講義「画像処理」の受講者50名に対して,12回の小テストを実施した.小テストは予習テストと復習テストの2種類がある.予習テストは,説明文に対応する語句を候補群の中から選択する問題5問程度からなる.復習テストは,説明文の内容の正誤を解答する問題で5〜10問からなる.いずれも,1回の講義に対応する内容としている.一方,行動ログとしては,解答にかかった所要時間,および解答時期を用いた.所要時間と理解度との関係では,所要時間が非常に短い(30秒以下)グループでは理解度が低かった.このグループは,問題にきちんと取り組んでいないと考えられる.一方で,所要時間が非常に長い場合も理解度がそれ程高くなかった.これは,内容を理解できていないため時間がかかっていると考えられる.また,理解度の高いグループが多く含まれる所要時間が存在した.これらの結果から,所要時間と理解度との関係が高く,適切な所要時間が存在することが分かった.解答時期と理解度との関係では,比較的ばらつきが大きかったが,復習テストについては解答期間の前半で高く,予習テストについては解答時期の後半で高くなる傾向であった.復習テストについては,授業で扱った内容であり授業直後の方が理解度が高い.予習テストは次の授業の内容であるが,次の授業前の方が動機付けが高いと考えられる. 研究期間全体を通じて,「受講者の振る舞いを計算機により自動分類する技術」「受講者の理解度を客観的に推定する技術」が開発できた.また,受講者から得られる行動データと理解度との関係を解析する手掛かりを得た.このような解析手法を受講者の振る舞いデータに適用して理解度と直接関係づける点については,引き続き検討が必要である.
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