本研究の目的は,授業のレポート課題に適した盗用発見システムを構築することである.授業で作成されたレポートは同一のテーマについて書かれているために,内容のみに基づいて盗用の判定を行うのは困難である.これを克服するため,本研究ではレポートの「表面的な特徴」に基づいて盗用判定を行う.すなわち,あらかじめ作成者が明らかなレポートの「表面的な特徴」から,そのレポート作成者に関する記述者モデルを作成しておき,疑わしいレポートが得られる度に,それが実際に作成者によって書かれたものか,それとも盗用であるかを,このモデルへの合致度合いに基づいて判定する. 本年度は,昨年までに構築した,隠れマルコフモデルに基づいた記述者モデルを利用して,判定システムをWebアプリケーションとして実装した。これを用いて,研究室の複数の学生を対象として,より実際的な環境でのテストを行った。すなわち,課題に基づいて簡単なテキスト文書を作成させ,Webアプリケーションを利用して提出してもらう。提出された文書を用いて記述者モデルを学習する。Webアプリケーションには,各学生に割り当てたユーザIDによりログインさせる。これにより内部には各学生に応じた記述モデルを作成する。提出されるそれぞれのテキスト文書は,記述者モデルの学習に利用するとともに,その時点までのモデルとの合致度から,ログインしているユーザが実際に作成したテキスト文書であるかを判定した。このシステムを教員役として複数の学生に利用してもらった。実験の結果,判定率は70%程度にとどまったが,教員役となったユーザに対するアンケート結果からは,システムの有用性が確認できた。
|