研究課題/領域番号 |
25330409
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
竹岡 篤永 高知大学, 総合教育センター, 特任助教 (30553458)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ストーリー型学習 / eラーニング / 学習への共感 / インフォーマル学習支援 |
研究実績の概要 |
本研究はeラーニングにおけるストーリー型カリキュラムを題材とし、学習者のストーリーへの共感度等を多面的に明らかにし、ストーリーへの共感度を高めるための改善手法の枠組みの構築を目指すことを目的とする。 本年度は、①ストーリー型カリキュラムの学習者の<参加体験についての振り返りデータ(既存)>に焦点を当て、新たな視点から、ストーリー型学習への共感度を探ること、②学習そのものについてのデータをできる限り集め、それらを分析することにより、共感度への仮説を立てること、および、③ストーリーそのものの魅力を活かした学習以外の活動事例を収集することを計画した。
①に関連する成果:新たな分析視点として、学習設計・学習経験を美学的見地から検討した「学習経験レベル」のフレームワークを用いた(Parrish, P. E., 2009)。このフレームワークを支える一つの柱である「学習者個人に係る4つの要因(意図 Intent・信頼感 Trust・プレゼンス Presence・開放性 Openness)」に沿って分析を行った。その結果、学習へのストーリー型学習への共感には、「開放性」「信頼感」が強く関連することがわかった。ストーリーへの関わり方を自らで作り出していくための支援の観点が得られた。 ②に関連する成果:ストーリー型カリキュラム学習者(学習修了者を含む)が定期的に集まる会(合宿や式典など)での発言を収集した。その中から、特に、学習そのものを振り返る発言データを抜き出し、分析を行った。状況へのコミットメントを調べるための仮説や詳細なインタビュー項目につなげる成果が得られた。 ③に関連する成果:インバスケット(未処理箱)研修によるストーリーの活用、ゲーミフィケーション(社会課題にゲーム要素を応用する手法)におけるストーリーの活用など、大学での学習以外の場面でのストーリーの活用事例の収集を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的である「学習者のストーリーへの共感度等を多面的に明らかにし、ストーリーへの共感度を高めるための改善手法の枠組みの構築を目指す」の中の、特に、共感度等を多面的に明らかにする点に関して、新たな分析フレームワークに基づき、ストーリーへの関わり方を促進するための具体的な観点が得られたため。ストーリー型学習への共感度は、学習体験のレベルと密接に関係しており、このフレームワークを用いた研究が有効であることが示唆された。
改善手法の枠組みを目指す研究については、ストーリーを取り入れた他の社会活動事例の収集を通じて、これまでとは異なる示唆が得られたため。本研究が目的とするストーリーへの共感度を高める方法を探るためには、学習場面に留まらず、ストーリーの活用一般を探ることが有効であった。現実社会をシミュレーションした活動における共感度の研究は、本研究とも密接なつながりのある可能性がある。
|
今後の研究の推進方策 |
1年目の研究で示唆されたSNSツール(例えば、Facebook)などが持つ一定の効果が示唆された。2年目である本年度の研究の過程では、学習経験のレベルに係る要因が、 ストーリー型学習への共感支援のためのフレームワークとして有用であることが示唆された。最終年度の3年目では、2年間の研究で明らかになってきたストーリー型学習への共感度を高める要因を統合して、学習への共感度の向上に寄与する枠組みの整理を目指す。
具体的には、1)学習経験のレベルのフレームワークを用いて、追加の分析を行う。学習経験のレベルに係る要因には2本の柱があり、2年目の本年度は学習者要因からのデータ分析を行った。最終年度である3年目では、もう一つの柱である学習状況の要因からの分析を行う。また、2)2年目で収集したインフォーマルな会話データの分析から、仮説を作り、遠隔地を含むインフォーマルな集まりの利用実態、それらとストーリー型学習との関わりについてなどを、インタビューなどを通じて明らかにする。以上より、学習への共感度の向上に寄与する枠組みの整理を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
データ分析に手戻りが生じ、予定していた研究会発表できなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
インタビューなどによるデータ収集を行う。
|