研究課題/領域番号 |
25330414
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
田中 佳子 日本工業大学, 工学部, 准教授 (10406423)
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研究分担者 |
小松川 浩 千歳科学技術大学, 総合光科学部, 教授 (10305956)
河住 有希子 日本工業大学, 工学部, 講師 (10605372)
八木田 浩史 日本工業大学, 工学部, 教授 (60222353)
櫛橋 康博 日本工業大学, 工学部, 准教授 (40247218)
野崎 浩成 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (80275148)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 主体的学び / 学修観 / 自己調整学習 / eポートフォリオ / メタ認知能力育成 / 青年期後期発達課題 |
研究概要 |
本研究は、大学教育の質保証の一環として、「測りやすい学力(知識・技能)」「測りにくい学力(問題解決力・問題発見力・学び合う力など)」と共に、自己調整学習に必要な自分の学びを客観視する力を育成することに取り組んでいる。大学生の主体的学びを育成し、社会に出てからの予測困難な状況において、自ら試み考え、検証し、吟味し、失敗から学ぶ姿勢を身につけることの重要性に本研究は力点を置く。つまり学生自身がどのように状況から学び、自分を育てるかに目を向け、自分の学びをメタ認知する力を持つことで自らを育て続けることが可能になるとする。そのために、自分の学びを自分でどのように捉えているかという「学修観」の調査を実施する。学修観の調査は、大学入学時を経て、発達課題などのライフイベント時や学年進行の区切りで、繰り返し実施することで、学生自身が捉えている自分の学び方の変化を自分自身で評定することを繰り返す。調査は、研究代表者の所属大学、研究分担者・研究協力者の所属大学、大学間連携事業(注1)にて実施している。 本研究の最終目標は、経年変化による各大学での調査結果と共に学生自身の評定・振り返りを蓄積することで、次世代の大学入学者により具体的なロールモデルとしての学びの姿勢を促す情報を提供することにある。現段階では、データの蓄積と、学生自身の振り返りを促すことで、より相互の情報交換を可能にすることも検討対象に入れ、学修観調査の評価を行っている。 (注1)研究分担者である小松川浩により、千歳科学技術大学を代表校として平成24年度「大学間連携共同教育推進事業」に「学士力養成のための共通基盤システムを活用した主体的学びの促進」が採択された。大学間連携では、千歳科学技術大学、山梨大学、愛媛大学、佐賀大学、北星学園大学、創価大学、愛知大学、桜の聖母短期大学の8大学で、学修観調査を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、学習者特性として学修観調査を行い、学生が自分の学びをどのように自分で捉えているかを把握し、その後の自分の学業結果と照らし合わせて自分の学び方を自分で調整していくことを目的としている。自分の学び方を自分でメタ認知し、自分がどのような学び方を選び、どのように学んでいくかをメタ認知することは自己調整学習には欠かせない。そのための学修観調査を継続的に実施し、学生が学んだ結果との関連を分析した。 平成25年度は、平成21年度から蓄積している調査結果のデータを元に、卒業後の進路までを含めた分析を行った。具体的には、平成21年度入学者の学修観と卒業後の進路結果との関連調査、平成22年度入学者の学修観と4年次のGPA、取得単位数などとの関連調査を行った。これらの調査結果に加えて、特定科目(単位が取りにくい科目として学生から認知されている科目)と学修観との関連を見た。それらの結果から、学習者特性である13因子のいずれか一つが修学において大きく影響するものではないことが分かった。さらに、学修観のタイプとして3要因を特定し、3要因の高/低による8タイプと学業成績の関連を見る分析手法を見いだした。 今後は、この分析手法を用いてより個に応じた学習経験を形成する修学環境についての分析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
紙ベースでの調査の実施を継続的に行う。そして大学間連携事業での実施も継続的に行うことで、各大学での経年変化を蓄積していくことが可能となる。また蓄積データの個々のケースを分析し、各データの意味あいを各教員が理解するための指導書の作成も検討している。 さらに、webでの調査実施とデータの蓄積を可能とすることを目的として、携帯・スマートフォン端末などの利用も視野に入れた調査方法の検討をしたい。それらのデータを蓄積するためのサーバとネットワークの構築も検討したい。特に大学間連携及び海外の大学での調査研究を展開し、日本の大学生のための大学での教育の提供として、より自律的、主体的な生き方を選択できる、生涯学び続ける人材の育成に役立てることを企図している。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の活用には、ロールモデルの多様性を必要としており、そのために幅広い大学層での調査実施を計画していたが、平成25年度は、まずは基礎調査として、本学内に限定して研究活動を行った。そのため、旅費、調査費用として計画していた予算において次年度使用額が生じた。 本学では、平成25年度は、新入生への調査実施と3年生への調査実施など継続的な調査を行った。さらに今後、本調査を活用するためには、大学生活において何をどのように活用するか、どのような修学環境で学生が自律的に学び、自己調整学習を行うことが可能になるかを知ることが必要である。そのために、卒業生などからロールモデルを選定し、今まで蓄積したデータの分析を進めることを研究の中心とした。 平成26年度は調査実施対象を拡大する予定である。 また、学修観を記載した個票が紙媒体であること生かし、学生が個票を随時参照でき、かつ、自分の学びを記録するための手帳・記録ノートの活用を検討している。学生が自らのライフイベントの記録、学修観の変化の記録をすることで修学ポートフォリオの一環とすることを可能にする。平成26年度は、これらの実践のために、ポートフォリオ作成に関わる物品購入を計画している。
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