研究課題/領域番号 |
25330433
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
児玉 幸子 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (10323883)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | メディアアート / 三次元造形 / 磁性流体 / インタラクションデザイン |
研究実績の概要 |
本研究課題では、磁性流体やその他の機能性材料を用い、自然界に見られるオーガニックな形(球、螺旋、棘、縞、迷路、セル、流体)をリアルタイムに生成し制御する手法を実験し、磁性流体彫刻の技法として発展させ、作品を制作する。最終的には、センサ技術とオーガニックな造形制御手法を組み合わせ、色によってオーガニックな造形が変化するメディアアートとして研究発表および展示発表を行う。 平成25年度に、合成炭化水素油をベース液とした磁性流体(黒褐色)と、それと非相溶な透明な合成潤滑油の2種類の液体を用いて、①縞、②迷路、③水玉の生成手法の実験を行った。合成潤滑油が磁性流体よりも比重が大きい組み合わせで、容器の底に磁力で磁性流体を吸着させ、その後磁力を徐々に小さくすることによる立体的な縞パターン生成を実現した。また、磁性流体のラビリンス不安定性として知られる現象を利用し、磁性流体と混じり合わない透明な合成潤滑油の2液体を、ガラス板の間に挟み込み、磁力、隙間の大きさ、磁界の向きと動きを適切に制御することでバリエーションある迷路パターンを生成した。迷路模様の複雑さ、縞あるいは水玉を生成させる条件のデータを取得でし、磁性流体と混じり合わない液体の量を磁性流体に比べて格段に多くした場合、適切な強さの磁場をかければ、薄板で挟むことなく、液体表面に磁性流体の迷路、水玉のパターン生成が可能となることを観察した。 平成26年度には、平成25年度で取得したオーガニックなパターン生成に関するデータを活用し、磁性流体の複雑なパターンを、デザインした動きで制御できるコントローラとソフトウエアを開発し、「Planet」シリーズに応用した。また、磁性流体を入れた透明なガラス容器の下にディスプレイを表示できるようにし、センサから得られた値に対してインタラクティブにコンピュータグラフィックスを生成するアプリケーションを開発した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、磁性流体と混じり合わない透明な合成油と磁性流体を用いてオーガニックな形を生成する実験を行い、コンピュータプログラムで制御するためのデータの取得と、造形要素としての効果の検証を行った。透明なガラス容器に2液を封入し、縞、迷路、水玉のパターンに、デザインされた動きを作り出す「Planet」シリーズの制作を進めた。このシリーズの最初期の作品として、100mmの球形ガラス容器を用いた作品「Ferrofluid Apple」は、平成26年の春にニューヨーク州立大学ストーニーブルック校で開催された展覧会「Boundles Fantasy: Media Art from East Asia」に招待出品された。また、直径150mmの球形ガラス容器を用いた作品「Planet No.2」は、パリのGallery da-Endにおいて展示され、どちらの展覧会においても、1カ月半の間、故障やその他の技術的な問題なく一般に展示ができることを確認した。「Planet」シリーズについては、日本デザイン学会誌デザイン学研究特集号「視覚文化におけるデザイン資源」の論文の一部に解説した。 不透明な磁性流体と、非相溶な透明な合成潤滑油の2液を利用することで、透明なガラス容器の底にグラフィックスを表示すれば、オーガニックなパターンを色彩豊かに表現するインタラクティブ・アートを作ることが可能である。平成26年には、そのためのデバイスとアプリケーションを開発し、第19回日本バーチャルリアリティ学会およびDesignシンポジウム2014で発表した。また、本研究課題に利用できる特許を、本研究課題の開始1年前に米国出願していたが、今年度、米国において取得されたことを報告する。[1] [1]米国特許US 8884528 B2:Vase-shaped device, light wall device, and system、出願日2012年12月12日、取得年月日2014年11月11日、発明者:Sachiko Muromura (Kodama)、出願人:Sachiko Muromura (Kodama)
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度には、以下の順序で研究を進める。①磁性流体および透明な合成油を、それぞれ異なる粘性、比重で組み合わせた実験をさらに進め、芸術表現に役立つオーガニックなパターン生成の理論的枠組みを構築する。②色をセンシングし、得られた色情報と、磁性流体によるオーガニックパターン生成をインタラクティブに結びつけるソフトウエアを開発する。(カラーセンサで色を取得し、立体造形に組み込んだ照明色変化に適用する技法を、平成26年に米国特許取得した。この技法は、本研究課題に応用する。)③平成26年に発表した、ガラス容器の下にディスプレイを設置し、センサで取得した値に対してインタラクティブにコンピュータグラフィックスを表示する研究成果に、カメラで画像認識する手法を導入して、色彩豊かなオーガニックパターンを生成するメディアアートを制作する。④色に反応してオーガニックな造形が変化するインタラクティブアートの展示を、研究者自身が検証容易な日本国内で行う。作品として数週間から数か月の期間展示し、鑑賞の様態を検証する。安全性と耐久性についても様々な角度から検討する。本成果成果は、Webサイトで公開する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
計画的に生じたものでなく、結果として端数が生じたものである。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品費と合わせて使用する予定である。
|