研究課題/領域番号 |
25330437
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
松浦 昭洋 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (50366407)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 視覚楽器 / 曲面 / 転がり / 曲面ディスプレイ / インタフェース / 物理シミュレータ / デジタル絵本 / コンテンツ |
研究実績の概要 |
「視覚楽器」に関して、本年度は主に以下の成果を得た。 1. 視覚楽器の高次曲面等への拡張に関しては、棒(バトン)の連続的な転がりが可能な高次曲面の形状をマニュアルで探索するのが困難であることが試作から示唆されたため、次の二つのアプローチを取った。まず実製作によるアプローチでは、より低次の双曲放物面状の曲面を対象とし、曲面を複数個円弧状に配置した装置を試作して、四曲面上で連続的な転がりが可能なことを確認した。本成果はBridges 2016に採録された。もう一つはシミュレーションを用いたアプローチであり、凸曲面上の棒の転がりの三次元までの物理解析を行い、動摩擦係数が十分大きいときに棒の角速度の更新式を導出し、本式に基づいて転がりの物理シミュレータを構築した。 2. マルチモーダルな視覚楽器に関しては、前年度以前から開発している曲面ディスプレイ上で棒を転がし操作するエンターテインメントシステムStick'n Rollを、センサからの入力、音、イメージ等を統合的に扱えるシステムに改良し、同システム上で動作するデジタル絵本コンテンツ「ころがる!まほうのバトン」を制作した。本成果は第4回デジタルえほんアワードで入選し、審査員特別賞を受賞した。 3. 楽器の展示・実演に関しては、上記コンテンツをデジタルえほんアワードの開催された国際デジタルえほんフェア2015内でビデオ展示し、さらに芸術科学フォーラム2016で実演発表した。前年度開発した羽根形状を持つ視覚楽器は、第80回形の科学シンポジウムで実演発表した。 4. 「面の平坦さの違いは殆ど人に認識できないが、転がりやすさが明確に異なる20面体は作成可能か?」という問題に取り組み、僅かな曲率を持つ球面三角形を各面に用いることで、問題への一定の答となる20面体の3Dモデルと実体物を作成、発表し、第9回デジタルモデリングコンテストで優秀賞を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高次曲面等シリンダー形状でない曲面を用いた視覚楽器の開発が途上である点、視覚楽器の分類と完了と対外発表がまだである点、学会やコンテストでの展示・実演は複数回(5回以上)行っているが舞台・パフォーマンスフェスティバル等での作品発表がまだである点、得られた成果のまとめと学術雑誌への投稿、等で遅れが生じている。 これらのうち、高次曲面に関しては、まず低次の双曲放物面状の曲面を用いることで、シリンダー状でない曲面で初めて連続的な転がりが可能な装置を発見し、Bridges 2016で論文が採録されており、シミュレーションを用いたアプローチでも成果が出て学会発表を行っており、次年度に研究のさらなる発展が見込めている。視覚楽器の分類に関しても、分類の基本的なアイデアは既に着想し整理中であり、次年度前半には発表予定である。 最後に、本年度研究が大きく進展し、対外的にも賞を受け評価された成果として、上記「研究実績の概要」に述べたデジタル絵本コンテンツや20面体のモデルの開発が挙げられる。 これらの進捗全体から、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
棒の転がりの物理解析では、より現実に近い物理条件を考慮し(例えば、動摩擦係数の値がより小さい場合や棒の側面周りの回転の考慮等)、その結果を反映したシミュレータを構築し、転がりに適した曲面を発見し、装置を製作し、有効性を検証する。視覚楽器の分類については、次年度にまとめ、対外発表する。パフォーマンス作品に関しては、一般の鑑賞に堪えうる作品の創作を行い、実演発表する。これまで得られている学術成果に関しては、それぞれ整理して学術雑誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
高次曲面等の幾何学的曲面上で棒等の物体を連続的に回転運動させる装置が試作、検証段階にあり、実スケールの視覚楽器の製作と対外発表ができていないことと、視覚楽器の分類と対外発表ができていないことが主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額の7-8割程度は、適切なパラメータを特定した実スケールの視覚楽器の製作費とその対外発表に要する費用に使用する。1割程度は、視覚楽器の分類の学会発表の旅費に使用し、もし残額に余裕があれば、論文掲載料に使用する予定である。
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