本年度は主に以下の研究を行った。 1. 人が巧みに操作す視覚表現を行う道具「視覚楽器」の分類基準を考案し、本基準により既存の道具を分類した。まず、操る道具の視覚性、運動性、操作性という本質に関係する、道具が手等身体に拘束されているか否か(拘束系か非拘束系か)、道具の動きが動的か否か(運動系か静止系か)、という二基準により、四つのカテゴリーに分類した。さらに、拘束系かつ運動系の道具は、運動の種類(マニピュレーション、複合的操作等)による細分法を、非拘束系かつ運動系の道具は、運動の種類(飛ぶ、弾む、転がる・滑る、それらの複合)による細分法を考案し、検討した全ての道具がいずれかのカテゴリーに含められることを確認した。本成果は形の文化会研究発表会で発表した。 2. 曲面ディスプレイ上で棒を転がし操作するエンタテインメントシステムの上で動作するデジタル絵本システムとコンテンツの開発成果をSIGGRAPH Asia2016でポスター発表した。 3. 凸曲面上の棒の転がりの厳密な物理解析と可視化に関し、前年度導出した棒の角加速度の更新式を用いるものから、棒の両端に異なる大きさの重りが付いた場合や、棒が曲面より短くその端点で曲面上を滑る場合に扱える範囲を拡張した。しかし、本手法では、シリンダー状と限らない複数の曲面が弧状に配置された場合や棒が軸周りに回転したり棒や曲面が弾性的である場合への一般化が困難であったため、物理条件が考慮できる3DCADソフトを用いて、双曲放物面上で物理パラメータを変化させながら棒の回転シミュレーションを行い、滑らかに転がる条件を探索した。その結果棒が一曲面上を転がる場合は発見できたが、複数の曲面を弧状に並べて転がす場合の物理パラメータの発見には至らなかった。 4. 2014年に出願した円弧ベースのブロック玩具に関する二件の特許が本年度審査の結果登録された。
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