研究課題/領域番号 |
25330440
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
白井 暁彦 神奈川工科大学, 情報学部, 准教授 (80589937)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多重化映像 / 多重化隠蔽映像 / 3Dディスプレイ / 付加価値創出 / 拡張現実感 / エンタテイメントシステム / バーチャルリアリティ / デジタルコンテンツ |
研究概要 |
本研究「多重化隠蔽映像技術による新たな情報共有空間の創出のための映像制作手法の確立」は、現在急速に普及しつつある立体ディスプレイをベースに、「奥行き・飛び出し」以外の新しい付加価値を与えることを研究の目的としている。 本提案では特に、技術的な基盤が完成しつつある多重化隠蔽映像を、幅広いコンテンツ開発者と協力しながら、「多重化」と「隠蔽」を利用した情報デザイン上の付加価値の提案、およびそれを実現する具体的な映像表現手法を確立し、デモコンテンツを広く発信することで評価することにより、新しい映像表現を社会に浸透させることを目的としている。 「多重化・隠蔽映像」が一般化すれば、複数人がひとつの大画面を視聴する環境(リビングルーム、教室、会議室、ミュージアム、パブリックビジョン等)において、大画面を共同視聴し、複数のチャンネルを「ゆるく共有」し、選択的に異なる情報を見ることができる。これにより映像メディアの可能性を大きく広げることができる。 このような背景において、本年度は既存の3Dディスプレイと互換方式である複数プロジェクタを使った映像多重化手法について、1.画質・色彩向上,2.ストーリー手法,3.インタラクティブ性,4.教育・理解向上,5.ユーザ間の関係デザインという要素について研究を続けてきた。従来不可能と考えられていたフラットパネルディスプレイでの多重化隠蔽映像の実現に成功した。 当該年度の成果として主要なものは,右のとおりである。(1)ニコニコ超会議2にて「ニコニコメガネ」を招待展示,(2)経産省Innovative Technologiesに採択,DCEXPO2013にて「2x3D」を展示,(3)研究成果2作品が先端技術館@tepiaで常設展示化,(4)テレビの多重化を可能にする汎用ソフトウェア「ExPixel」の開発に成功,(5)裸眼とメガネ装着で全く異なる映像を見せられる「ExPixel」技術
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
以下の5つの要素、(1)画質・色彩向上(2)ストーリー手法(3)インタラクティブ性(4)教育・理解向上(5)ユーザ間の関係デザインについて複合的にデモコンテンツ制作を行い、Webを用いた発信や、体験可能な公開展示などの社会周知機会を設けながら遂行する計画で研究を推進した。体制としては、コンテンツ制作者や国内外の専門家といった非研究者とのコラボレーションを積極的に行う。また所属機関である情報メディア学科の学生、大学院生、他教員、国内外のコンテンツ制作の専門家らと協働しながら研究を遂行している。 研究期間は、3年間を想定しており、初年度である平成25年度は(1)画質・色彩向上を中心とした研究を行う。研究に必要となる研究機材の調達、特に外部の専門家において実験するためのマスプロトタイプの購入と、映像制作機材の調達を行った。多重化隠蔽映像システムを構成する要素のほとんどは消耗品であり、PC、プロジェクタ、光学部品としては偏光フィルタ(直線偏光、円偏光)を購入し、樹脂製のメガネは大学内工房において加工し十分な試作および実験を行うことができた。平成26年度に計画していた画質向上をさらにすすめ、80インチ程度の大型スクリーンでの実験をカラーメーター(照度計)を使用せずプロトタイピングを続けたところ、従来不可能と考えられていたフラットパネルディスプレイでの実現可能性を見出し、年度内に国内外に発表することができたことは特筆に値する成果である。
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今後の研究の推進方策 |
フラットパネルディスプレイによる実現およびその反響から、提案時点でのプロジェクターベースの研究を「第2・3世代」、新たに「第4世代」としてハードウェア側の開発ロードマップを再構築したが、本研究テーマ「多重化隠蔽映像技術による新たな情報共有空間の創出のための映像制作手法の確立」におけるロードマップは大きな変更が必要なく、従来の研究成果をそのまま活かしていくことができることがわかっている。 具体的には「(2)ストーリー手法、(5)ユーザ間の関係デザイン」を中心に専門家とともに研究をすすめる。映画のような不特定多数が視聴する大画面において、個々人の属性である文字メッセージを共有することは技術的に可能ではあるが、情報デザイン的に望ましくないケースもある。本研究は文字メッセージ以外にも、応用の幅が広く日本語と英語といった多言語の字幕や、デジタルサイネージ、携帯電話との連携、(電気的な接触デバイスの使用が難しい手術室などの)医療画像への応用などが考えられる点も特色がある。 これまでの研究成果および成果発信により、具体的に研究成果を活用して製品・サービスに組み込みたい企業も多く打診があり、積極的に産学連携によって新たな展開へ繋げたいと考えている。 また最終年度となる平成27年度は「(3)インタラクティブ性、(4)教育・理解向上」を加えた要素でコンテンツ開発を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
学内の補助金により学生の旅費が想定よりも安く済んだため. 海外発表含め,発表旅費に充当予定.
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