本研究は、ナノテクノロジーの成果を活用した小型センサの実用化を行い、オゾン濃度の把握が乏しい地域での長期測定、また都市域での精密測定を行うものである。 初年度(平成25年度)には、オゾンセンサの実用化に向け、1) センサ応答に影響を与える環境条件の特定、2) モニタリングデータ送信システムの構築、3)遠隔地(札幌市手稲山山頂および北海道大学天塩演習林)での環境測定への試験的適用を行った。1)については、気象要素および他の汚染物質成分の影響について、その度合いや補正方法の検討を行うとともに、センサの器差について較正手段、2)については、携帯通信端末とマイコンボードを用いることで、容易かつ安価なデータ送信システムを構築した。 二年目(平成26年度)には、1) センサ較正法とモニタリングデータ送信システムの確立、2)遠隔地でのリモート環境測定、3)森林(北海道黒松内ブナセンター)での測定を行った。1)については、これまでの結果に基づき、年間を通したセンサー較正法を確立し、紫外線吸収法で測定したオゾン濃度との良好な一致(相関係数は0.94)を得た。データ送信システムについては、天塩演習林において、すでに1年以上のデータ取得が継続されており、自動化とともに無人化に成功した。2)については、都市汚染の少ない天塩演習林や手稲山で、粒子センサーを用いた微粒子計測を同時に行い、越境輸送によるオゾンの高濃度時に微粒子を伴う場合とそうでない場合があることがわかった。 最終年度(平成27年度)には、光化学スモッグ時を対象として、東京都多摩丘陵に設置されたタワーの4箇所にセンサを設置し、高度別の植物暴露濃度の把握を試みた。その結果、樹冠(樹木の上端)下部に最小値を持つような特異的な高度分布が得られ、オゾンの森林影響評価に大きく寄与できることを示した。
|