アレルギー性疾患は年々増加傾向にあり、今や国民の2人に1人が罹患しているとされている。アレルギー疾患の発症を抑制するためにはアレルゲンへの暴露を回避することが重要であるが、住環境中のアレルゲンはハウスダストとともに堆積して存在するのみならず、空間中に浮遊・拡散して存在しており、またその分布は気温や湿度、気流に影響を受けるため所在を把握することは容易でない。すなわち、アレルギー疾患の効果的な予防・治療支援を行うためには、住環境における浮遊アレルゲンの濃度分布をリアルタイムに評価し把握することが求められている。そこで、気相成分の捕集と高感度なアレルゲン検出を一連の操作にて実現可能な新規なアレルゲン計測システムを着想した。昨年度までに、精製ダニアレルゲン(Der f1)をエアロゾル化して浮遊アレルゲンとし、先行研究成果である光ファイバ式蛍光免疫計測実験系へとサンプルを供給するための、アレルゲン捕集実験系について構築条件の検討を進めてきた。最終年度である今年度では、実際の家屋から採取したハウスダストを構築した捕集実験系に供し、得られた溶液について光ファイバ式蛍光免疫計測実験系にてDer f1濃度の評価を行った。なお、同一のハウスダストは従来法であるELISAでもDer f1測定を行った。構築した実験系を用いて評価を行ったところ、従来法による測定値と矛盾しない結果となり(r=0.998)、実際のハウスダスト試料からのダニアレルゲンの検出と定量評価に成功した。以上、本研究期間において、浮遊アレルゲン捕集実験系を構築し、先行研究成果と組み合わせることで気相中Der f1の捕集計測が可能となった。なお、アレルゲン捕集率は約0.2%と低いことから、捕集実験系や免疫計測実験系について実験条件の最適化を進め、住環境における浮遊アレルゲンの連続計測及び分布評価へ展開を図る予定である。
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