研究実績の概要 |
本研究では,ヨードフルオロカーボン類と硝酸ラジカルの反応過程とヨウ素置換効果の解明を目的に、時間分解型キャビティーリングダウン分光法装置(TR-CRDS装置)を用いてヨードフルオロカーボン類のうちジフルオロヨードメタン(CF2HI),1,1,1-トリフルオロ-2-ヨードエタン(CF3CH2I),1,1,1-トリフルオロ-2-ヨードプロパン(CF3(CH2)2I),1,1,1-トリフルオロ-4-ヨードブタン(CF3(CH2)3I)に対して,硝酸ラジカル(NO3)との反応の測定と反応速度定数の決定を行った。結果として、NO3とそれらのヨードフルオロカーボン類との反応速度を決定することができた。これらの結果より、ヨードフルオロカーボン類とNO3の反応性に対するヨウ素原子の置換位置や水素原子置換位置や数による影響についての知見が得られた。また、実験により決定された速度定数を用いることにより,それらヨードフルオロカーボン類が大気中に放出された際,NO3によりおおよそ数十時間で大気中より除去されることがわかった。 一方、4種のヨードフルオロカーボン類に対して紫外可視領域の吸収スペクトル測定と吸収断面積の決定なども行うことにより、太陽光分解によるそれらヨードフルオロカーボン類の大気除去速度も求めた。結果として、これらのヨードフルオロカーボン類が大気中に放出された際,太陽光分解により数十~数百時間で大気中より除去されることがわかった。一般的に地表で放出された化学物質が成層圏に到着するまでには1カ月程度かかると言われている。このことより,これら4種のヨードフルオロカーボン類は大気中に放出しても,成層圏オゾンの破壊に繋がらないことを本研究で明らかにした。
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