平成28年度は,これまでの研究結果を論文にまとめ,学術雑誌に投稿することと,昨年度研究計画の見直しをおこなった点について以下の通り研究を進めた。 本研究では,衛星データを用いた総生産キャパシティー推定アルゴリズムに光合成の日変化を組み込むことが大きな特徴である。そのためには,日変化の気象データが必要である。地上観測における各場所の気象データは存在するが,全地球をカバーしているわけではない。気候モデルでは地球上のグリッド毎の気象要素を計算する。そこで,気候モデルを使用した計算のフラックスサイトの場所に対応した気象要素データを入手し,そのデータの本研究での利用可能性について調べた。その結果,植生が乾燥によるストレスを受けやすい疎な灌木サイトで,光合成の日中低下がおこりやすい8日間の平均日変化は,モデルの計算値と地上での観測値は多少の差異はあるものの,ほぼ一対一の関係にあった。大気乾燥度(飽差)は特に午前から昼にかけ植生のストレス状態を判断するため必要であるが,この時間帯は比較的よく一致していた。光合成有効放射量は日中の最大値に差異があることもあったが,比較的両者はよく一致しており,総生産キャパシティー推定に利用できると考えた。 また,キャパシティーと日中低下による減少量それぞれの総生産量推定に対する寄与率を事前に把握する必要があると判断した。そこで,総生産キャパシティーと総生産量がどの程度異なるかを,比較的長期間観測されているフラックスデータを使用して調べた。特に日本の水田に関しては,6年間観測のフラックスデータと16年間観測の衛星データ観測の反射率データを用いた解析により,フラックス観測の総生産量は,総生産キャパシティーの91%であり,第一近似では 総生産キャパシティーが総生産量とみなせることが明らかとなった。本解析結果は論文にまとめ,学術雑誌に投稿し,受理された。
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