研究課題/領域番号 |
25340012
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
寺田 竜太 鹿児島大学, 水産学部, 准教授 (70336329)
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研究分担者 |
ニシハラ グレゴリーナオキ 長崎大学, その他の研究科, 准教授 (40508321)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 温暖化 / 沿岸生態系 / 藻類 / 藻場 / 温度耐性 / 海藻 / 海草 / 生物多様性 |
研究実績の概要 |
本課題では,藻場を構成する海藻類の分布南限や北限の個体群に注目し,分布の辺境域における個体群の生育環境と水温・光等の環境ストレスに対するレスポンスの特異性を解明すると共に,藻場衰退のサインとなるモニタリング指標を確立することを目的とした。海藻類を主な対象とすると共に,同様な極限環境に生育する淡水藻や海草,造礁サンゴも含めて研究を行った。 海藻類の中には,世代によって形の異なる異型世代交代の生活史を持つ種類が知られている。光化学系IIの最大量子収率を測定した結果,1年生のアマノリ類は世代よって異なる温度特性を示し,各世代の生育時期に適応した温度特性を有することが明らかになった。一方,多年生のコンブ目藻類では,微少な配偶体世代と巨視的な胞子体世代でほぼ同じ温度特性を示した。このことは,世代の出現時期が季節によって区別されておらず,両世代が同じ時期に生育可能であることを示唆している。 海藻類は日の出から日没まで,刻一刻と変化する光環境の中で生育している。しかし,天然の光環境下での光合成活性のリアルタイムの変化は十分に把握されていない。実効量子収率を天然の生育環境で日の出前から日没まで12時間以上にわたって測定した結果,日出後の光量増加に伴って実効量子収率が低下し,正中時に最低値を示した。また,午後は光量低下に伴って回復し,日没時に最高値まで回復していることが明らかになった。 これらのことから,海藻や海草,造礁サンゴなどは刻一刻と変化する光や温度の環境に迅速に応答しながら沿岸生態系の中で至適な生育地を確保して群落を形成していることが示唆された。また,分布南限の個体群は概ねの生育地の温度環境に適応していることが示唆されたが,夏季の最高水温は光合成活性の点で上限に近いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね計画通りに進展しており,25-26年度に計9報の論文(26年度は4報)をインパクトファクター付きの国際誌で公表した(オンライン,受理ベース)。論文は研究代表者が筆頭またはコレスポンディングオーサーとしてすべて刊行しており,科研費研究の成果である。また,学会発表も25-26年度に計28回(26年度は14回)行った。
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今後の研究の推進方策 |
概ね計画通りに進展しており,平成27年度の計画に沿って実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究対象の一部の種(アントクメ等)の繁茂期は3月末から5月の両年度にまたがってるため,調査と実験を27年度に実施することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
26年度分の27年度の上半期に実施し,予定の研究を行う。
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