研究課題
本課題では,藻場を構成する海藻類の分布辺境個体群に注目し,分布辺境域における個体群の生育環境と,水温・光等の環境ストレスに対するレスポンスの特異性を解明することで,藻場衰退のサインとなる指標の確立することを目的とした。海藻類を主な対象とすると共に,同様な極限環境に生育する淡水紅藻や海草,造礁サンゴも含めて研究を行った。平成27年度は,全国規模でのモニタリング指標の確立を目指すため,北海道産のスジメ,千葉産アラメ,兵庫産カジメ,熊本産クロメ,鹿児島産アントクメとヒジキ,ヒメエダミドリイシ,ナラワスサビノリ等を用いた。異型世代交代の生活史を持つ種類では,世代によって異なる温度特性を持つことが知られている。ナラワスサビノリの光合成に対する温度や光の影響は,胞子体世代と配偶体世代で著しく異なり,それぞれの出現時期の環境に概ね適応していた。また,ヒジキやヒメエダミドリイシのYield活性を日出から日没まで,14時間にわたってDiving-PAMで水中測定した結果,日中の光量の増加に伴ってYieldは顕著に低下し,午後の光量低下に伴って回復した。深所性のアントクメの群落について,晴天の正中時に生育上限水深(3m)から水深20mまでDiving-PAMでYieldを測定した結果,群落の中心帯(水深10-15m)は強光の影響を受けないが,生育上限付近の個体はYieldが低下しており,実験系でそれ以上の光量を連続照射した結果,夜間の暗馴致後も回復が見られなかった。ヒジキやヒメエダミドリイシ,ナラワスサビノリ,カジメについて,低温時に光の影響を測定した結果,低温に光のストレスが複合的に合わさることでYieldが著しく低下し,回復が阻害された。このことは,当該種の分布の北限域では,冬季の晴天時に強光の影響が複合的に生じることが,個体群にストレスを与える要因になりうると考えられた。
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Phycologia
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