研究実績の概要 |
本研究では、海域のサンゴの採取と生育環境を制御した海水藻を用いた飼育実験により海水及びサンゴ各部位における微量元素の含有量と各元素間の関連性の特量を多元素プロファイリングアナリシスにより明らかにし、生育環境の違いが各部位の微量元素の摂取、代謝、蓄積に与える影響をメタロミクス的観点から考察することを目的とする。平成26年度は次のことを実施した。 【サンゴの飼育】 琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底実験所付近の海域でハマサンゴを採取し、5種の微量金属元素(Ni, Cu, Zn, Cd, Pb)を添加した海水槽で飼育した。海水槽中の金属濃度は、海水中の存在量の2倍、10倍、50倍濃度及びコントロールとし、数日ごとにサンゴを1群体ずつ取り出し、褐虫藻、軟体部、骨格、粘液を採取した。 【褐虫藻及び軟体組織の分析結果】 得られたハマサンゴの褐虫藻の数を血球計算板で計測したところ、10倍、50倍濃度の海水槽で飼育したハマサンゴについては、飼育日数経過とともに褐虫藻の数が減少し、重金属ストレスでも褐虫藻の減少が引き起こされることが確認された。また、ICP-MSによる測定結果から、50倍濃度海水で飼育したサンゴ褐虫藻は、Zn, Cuが時間経過とともに増加傾向が見られた。このようにZn, Cuはいずれも飼育環境中濃度が増加するにつれて褐虫藻中濃度が増加し、さらに褐虫藻と軟体組織の濃度変化は類似していた。これに対して、Ni, Pbは海水中濃度が増加しても明確な増加は見られなかった。 【骨格の分析結果】 レーザーアブレ-ション/ICP-MSにより、平板に切断した骨格を成長輪に垂直に測定を行った。骨格の成長に対して各元素のイオン強度をカルシウムのイオン強度を基準とした相対強度をプロットしたところ、今回の条件では、Ni, Cu, Zn, Cd, Pbについては明確な骨格への取り込みが確認されなかった。
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