研究実績の概要 |
本研究では2003年から2011年までの時系列SCIAMACHYデータを用いて地上のメタン発生濃度を推定し、CH4ソースを抽出した。既存の研究では困難であった地上のバックグラウンドCH4濃度を、同緯度の海域のCH4濃度とみなし、地上のCH4発生濃度を求めた。また、CH4ソースの地理的特徴を植生図と比較し、CH4発生の原因について調べた。 その結果、自然起源のCH4ソースの土地被覆特徴は主に常緑広葉樹林であることが分かった。CH4発生量の季節変動が生じるが、この季節変動は光合成活動に起因したCH4の生成ではない。常緑広葉樹林の時系列NDVIは年間変化が少ないため、光合成活動も年間変化が少ないと考えられる。また、常緑広葉樹林がすべてCH4ソースではない。常緑広葉樹林からCH4が生成するのであればCH4ソースがもっとブラジルまで広く分布しなければならない。 中部、西部アフリカや南アメリカのCH4発生濃度の季節変動は雨季と密接な関係がある。3つの地域はケッペンの気候区分によると熱帯雨林気候、サバンナ気候や熱帯モンスーン気候になる。熱帯雨林気候は年中多雨であり、サバンナ気候や熱帯モンスーン気候は雨季(中部アフリカは5月から7月まで雨季)と乾季(ブラジルは5月から9月まで乾季)に分かれている。雨季になると十分な雨によって地面の状態は一時的に嫌気的環境に変わり、その結果CH4が生成しやすくなる。地下で発生したCH4は植物の蒸散活動によって植物の葉から地上に放出される(Megonigal and Guenther, 2008)。また、地面近くで生成されたCH4はそのまま大気中に放散されたと考えられる。また、アジアの高緯度地域(シベリア)で高いCH4発生濃度が観測された。シベリアは緯度が高いため3月から9月までデータが観測されるが、その中で4月のメタン発生濃度が一番高い(40~60pb)。シベリアの膨大な面積は自然の湿地でありメタン発生源である。
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