研究課題/領域番号 |
25340016
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
布施 博之 芝浦工業大学, システム工学部, 教授 (30357925)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メタン酸化酵素遺伝子 / アンモニア酸化酵素遺伝子 / 海洋環境 / メタン資化性菌 / 短鎖炭化水素資化性菌 |
研究実績の概要 |
銅欠乏状態の菌体を用いたエタン酸化の実験により、銅の欠乏状態においては、エタンの酸化活性が低下することから、エタン資化性菌ET-HIRO株、ET-SHO株においては、銅を活性中心とするメタン酸化型酵素(Cu-MMO)がエタンの酸化に関与していることが推定された。両株は2つのCu-MMO遺伝子群(clusterⅠ, Ⅱ)を有するが、エタン、ピルビン酸, グルタミン酸, イソブタンを生育基質としたET-HIRO株において, clusterⅠの発現は認められず、cluster Ⅱのみが構成的に発現していることが示された.また、両株のVOC分解試験により、VOCの分解能を有することが示された。 遠州灘沖の海泥試料から新規のエチレン資化性細菌ETY-TS株を単離した。TS株はCu-MMO様の初発酸化酵素遺伝子を有しており、エチレンによって誘導的に発現していることから、エチレン分解に関与していることが示唆された。TS株は様々なVOC類を分解することができ、バイオレメディエーションへの応用の可能性が示唆された。 上記を含む主要なメタン資化性菌・エタン資化性菌・エチレン資化性菌の分離保存株について、ドラフトゲノムの解析を行った。その解析から、エタン資化菌のiB-TB08W株が、3つのCu-MMO遺伝子群をもつことが、明らかになった。 また、これらの情報を基に、非メタン系Cu-MMO遺伝子検出用プライマーを設計し、Nested-PCRを行うことで環境中の遺伝子の検出が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究目的としては、①新規な短鎖炭化水素類酸化微生物の分離と性質の解明、②分離菌株の情報に基づいたメタン・アンモニア酸化細菌等検出用の新規プライマーの合成、③それら微生物の環境中における分布調査、を掲げてきた。 全体の進行の速度自体はそれほど先に進んでいるわけではないが、当初、分離菌株の遺伝子については、個別にクローニング等により明らかにしていく予定であったところ、次世代シークエンサーの利用により、広い範囲でその遺伝的特性を明らかにすることができ、個々の微生物の特性をより広範囲に深く把握できるようになってきている。
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今後の研究の推進方策 |
一応、検出用のプライマーの設計は終わったので、実海域の試料へその適応を図っていく。また、ドラフトゲノムの解析の終わった菌株について、その特異的遺伝子の解析を行っていくことにより、個々の微生物の特性をより明らかにしていき、さらに検出手法の改良を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月中に電子顕微鏡写真の撮影予定があったため、そのために取っておいたが、3月中に発注が間に合わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
電子顕微鏡写真の撮影については、沈殿物の生成が問題となったので、その対処を検討し、使用する予定である。
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