研究課題
富士山は孤立峰のため自由対流圏に位置することが多く、下層大気の影響を受けにくい。また、高高度にあるため宇宙線による電離量が多くイオン誘発核生成が起こる可能性が高い。この富士山の山体を利用してエアロゾルの気候への影響を調べた。26年度の主な成果は以下の通りである。1. 7月18日~8月23日に富士山頂にて宇宙線強度、ラドン濃度、SO2濃度、CO濃度、O3濃度、小イオン濃度、エアロゾルの粒径分布、雲凝結核濃度を同時に測定した。20nm以下の粒子濃度が3時間以上継続して高濃度となるイベント(新粒子イベントNPF)が合計18回観測され、そのうち日中は7回、夜間は8回、日中から夜間まで継続するものは3回となった。NPFイベント時のエアマスを(Ⅰ)主に大陸由来、(Ⅱ)成層圏から降下、(Ⅲ)主に日本由来、(Ⅳ)太平洋由来と4つに分類したところ、それぞれ、7, 1, 1, 9例あった。(II)の時にイオン誘発核生成と思われるNPFが一度だけ観測された。2. 7月17日~8月23日に太郎坊においてエアロゾルの粒径分布、ラドン濃度、イオン濃度、一酸化炭素の連続測定を行った。ほぼ毎日エアマスの由来や日射の有無によらず午前中に新粒子生成イベントが観測された。新粒子生成直前はCS、CoagSの値が低く、新粒子生成に適した環境であることが分かった。その後の粒子成長は、日射がある場合の方が凝集により核生成モードの粒子が成長することが多かった。また日射がない場合の方がエイトケンモードや蓄積モードの大きい粒子がさらに成長することが多かった。成長速度はどのモードでも日射がある場合の方が速かった。
2: おおむね順調に進展している
1. 山頂にてラドン濃度、SO2濃度、CO濃度、小イオン濃度、エアロゾルの粒径分布、雲凝結核濃度を同時に測定したが、宇宙線強度は測定できなかった。2. 天候が悪かったので、太郎坊において係留気球観測ができなかったが、徒歩登下山観測に雲の内外においてエアロゾルを採取し、電顕分析をすることができた。
1. 昨年10月から開始された太郎坊における連続観測を継続し、新粒子生成の季節変動を調べる。また、同時に測定しているラドン濃度、イオン濃度との関連を調査する。2. 7,8月に富士山山頂での観測を行う。宇宙線強度との比較を行いたい。3. 8月上旬に太郎坊において、鉛直構造の集中観測を行い、データの補強を行う。
太郎坊での集中観測において、係留気球観測を予定していたが、天候不順のため観測できなかったので、一部次年度へ繰り越した。
8月上旬、太郎坊における集中観測の経費として使う。
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大気環境学会誌
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