研究課題
富士山は孤立峰のため自由対流圏に位置することが多く、下層大気の影響を受けにくい。また、高高度にあるため宇宙線による電離量が多くイオン誘発核生成が起こる可能性が高い。この富士山の山体を利用して以下のようにエアロゾルの気候への影響を調べた。7月19日~8月23日に富士山頂において、エアロゾルの粒径分布、雲(霧)粒、雲凝結核濃度、ラドン濃度、イオン濃度の連続測定を行った。また、山麓の太郎坊(標高1300m)において,2014年9月からエアロゾルの粒径分布、ラドン濃度、イオン濃度、スカイラジオメータの連続測定を行った。また、7月~8月はライダー、ソーダーにより、鉛直分布の観測を行った。8月3日~5日に太郎坊において係留気球観測、ゾンデ観測を行った。太郎坊において測定したラドン濃度の季節変化を見ると、秋から冬にかけて高濃度、春季から夏季にかけて低濃度の季節変化を示した。9月はデータ数が少ないため、この傾向から外れたものと思われる。SMPSで測定した粒子数濃度の季節変化を見ると、12月~3月にかけて30nm以下の粒子が高濃度となっている。この期間、新粒子生成発生率も高く、スカイラジオメータで測定した直達光強度も高いが、谷風発生率は減少していた。つまり谷風の有無より、日射量の強さの方が新粒子生成発生に影響を及ぼすことを示している。エアロゾルの光学的厚さは冬季に小さく、春季から夏季にかけて増加する明瞭な季節変化がみられた。また月平均値は全期間を通じて太郎坊が神楽坂に比べ低く推移していたことから、2地点間のエアロゾル量に明確な違いが現れている。一方、オングストローム指数は両地点ともに明瞭な季節変化が見られなかった。2015年3月には両地点で値が1を下回ったが、これは黄砂に代表される、アジア大陸からの汚染気塊の輸送に伴う粗大粒子の卓越によるものと推測される。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 7件、 招待講演 2件)
大気環境学会誌
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Aerosol and Air Quality Research
Geophys. Res. Lett.
巻: 42 ページ: 3019-3023
10.1002/2015GL063677
Asian Journal of Atmospheric Environment
巻: 9 ページ: 1-11
http://dx.doi.org/10.5572/ajae.2015.9.1.001