研究課題
本研究課題「衛星を用いた都市域におけるPM2.5濃度の広域分布推定」に関する実績概要を示す.平成25年度は「都市域におけるエアロゾルの光学的厚さ(以下AOT)分布を導出と精度評価を行った.また,AOT分布からPM2.5濃度分布を推定し地上計測値を利用した精度評価を行った.その結果,同一地点で同期観測しているPM2.5サンプリングデータと比べ,実用可能な結果が得られた.しかし,この手法では,(エアロゾルの高度分布情報を使用するため)地上ライダーデータの同期計測が不可欠となる.当然,グローバルな観点から見ると,ライダーデータ計測サイトは限定される.平成26年度において,ライダー計測データが存在しない地点においても,AOT分布からPM2.5濃度推定が可能となるよう手法を検討改良した.具体的には,過去の地上ライダー計測値を利用し,エアロゾルの高度分布(プロファイル)を通常時及び黄砂飛来時の二種類に分けて,統計的に2種類の標準プロファイルを導出した.求まったエアロゾル高度プロファイルと地上AOT計測値の月平均値からPM2.5濃度を推定したところ,PM2.5の月平均値では標準プロファイルを用いることで十分な推定精度の向上が見られた.
2: おおむね順調に進展している
初年度において地上ライダーによる計測データを併用する形でPM2.5濃度分布推定を行った結果良好な推定精度が得られている.しかし,地上ライダーデータは非常に限られた場所のみに設置されていることから,地上ライダー計測情報に依存しない形のアルゴリズム変更が必要である.地上データのみでアルゴリズム評価を行った結果,PM2.5濃度の月平均濃度値推定においては,推定精度の向上が見られたことから,概ね順調と判断した.
現在利用中のGOSAT衛星データに関し,2009年から2011年までの時系列データを収集済みである.これらのデータを用いてアルゴリズム検証を早期に実施する.また,平成27年度より本格運用が始まる静止気象衛星ひまわり8号用のエアロゾル推定手法を検討する.PMサンプリングのみならず,米国NASAグループの地上エアロゾル計測,国立環境研究所のライダー装置の共同運用を継続実施し,大気粒子データの蓄積拡充と高精度化を目指す.
平成26年度中にフランスよりPARASOL/POLDERデータの再検定済データを取得する予定であったが,GOSATデータのデータ転送を優先させたため取得時期が27年となった.そのため,保存のストレージ料金が未使用となっている.また,海外における成果発表を平成26年度の4月に開催されたEGU学会にて学会での成果発表を計画していたが,都合により出来なくなったため.論文投稿費に関しても平成26年ではなく27年度に使用する予定となったため.
平成27年において,POLDERデータ保存,及びひまわり8号データ保存のためのストレージ媒体量として使用する.また,平成27年4月に開催されるEGU学会への旅費,及び論文投稿費として使用する予定である.
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)
Earth Science Reviews
巻: 145 ページ: 85-116
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Front. Environ. Sci.
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