研究課題/領域番号 |
25340020
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
白石 浩一 福岡大学, 理学部, 助教 (80299536)
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研究分担者 |
林 政彦 福岡大学, 理学部, 教授 (50228590)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 北極成層圏 / 成層圏エアロゾル / エアロゾルゾンデ / 極渦 / ニーオルスン |
研究実績の概要 |
H26年度冬季にニーオルスンにおいてエアロゾルゾンデを用いた不揮発性成分の粒径分布の観測を行った。また、その観測の準備と並行して、ニーオルスンでの過去16 年間のエアロゾルゾンデ観測データの再解析を行った。 ニーオルスンでの過去16 年間のエアロゾルゾンデ長期観測データを用い解析では、対流圏上部及び成層圏エアロゾル粒径分布の長期的な変動、および、気象場(極渦内での位置や輸送過程、対流圏大気運動など)との関係に焦点を当てて、解析を進めている(担当者 白石)。昨年度の解析により、成層圏エアロゾルの粒径分布は、対流圏界面高度から対流圏界面高度+3km、対流圏界面高度+3kmから高度20km、高度20kmより高い高度において明確な違いがあることが分かった。今年度の解析により、対流圏界面高度から対流圏界面高度+3kmにかけての高度域でのエアロゾルの数濃度・粒径分布は、各年の極渦の発達に伴う大気沈降の影響だけでなく、大気の運動に伴った、より低緯度の対流圏上部の空気塊や成層圏下層部の空気塊の流入の影響を強く受けることが分かった。そのため、現在、気象場(客観解析データによる極渦、気圧配置、温位の水平・鉛直分布など)との関係について調べている。 冬季にニーオルスンで実施する観測の準備として、H26年4月から11月にかけて、観測資材の準備、加熱ヒーターの作成、動作試験、現地での気球観測で協力を依頼するアルフレットウェゲナー研究所のノイバー氏と打ち合わせ等を行った(担当者 林、白石)。12月に観測装置の発送を行い、H27年1月にニーオルスンにおいて不揮発性粒子の気球観測を実施した(担当者 白石)。地上から高度25㎞にかけて不揮発性粒子の粒径分布の観測に成功した。現在、得られた不揮発性粒子の粒径分布の解析を行い、不揮発性粒子の混合状態について検討している(担当者 白石、林)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究実施計画では、ニーオルスンでの不揮発性粒子の観測の準備と実施、ニーオルスンでの過去16 年間のエアロゾルゾンデ観測データの再解析を行うことを計画した。 ニーオルスンでの不揮発性粒子の観測については、加熱ヒーターの準備(ヒーターの作成、加熱温度の選定)を行った。受信装置や気球関連の観測資材の準備も予定通り行うことができた。観測資材の発送、現地の観測など、おおむね順調に進めることができた。観測では不揮発性粒子の地上から高度25kmまでの詳細な粒径分布を得ることができた。 ニーオルスンでの過去16 年間のエアロゾルゾンデ観測データの再解析では、やや研究の進行状況は遅いが順調に進めている。しかしながら、観測資材の準備、観測物資の発送の準備等が学会等と重なってしまったために、研究成果の発表等はまだ行っていない。 以上の研究進行状況から、達成度は「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年4月から8月にかけて、平成26年度に実施した不揮発性粒子の粒径分布の観測結果から、対流圏界面~成層圏下層部の揮発性粒子・不揮発性粒子の濃度・粒径分布を明らかにし、不揮発性粒子の混合状態とエアロゾルの組成について検討する。そして、それらの高度分布と輸送過程との関係、成因機構について考察する(担当者 白石、林、柴田)。また、過去のエアロゾルゾンデ観測データの解析は平成27年8月まで継続して進め、成層圏エアロゾルの数濃度・粒径分布の長期変動と輸送過程と粒径分布の関係について調べた結果についてまとめる (担当者 白石)。長期観測データの解析から得られた結果を考慮して、北極成層圏エアロゾルの不揮発特性、粒径分布、エアロゾル組成とその成因について再検討し、結果をまとめる(担当者 白石)。研究成果は、国内と国際の学会で順次発表していく。結果はまとめて、順次論文を執筆する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ニーオルスンでの冬季の北極大気エアロゾル不揮発特性の観測は、平成27年1月に実施した。観測で使用した物資のニーオルスンから日本への送り返しの輸送費については、後払いであったため、次年度(平成27年度)で支払いを行う予定である。それに伴い輸送費として準備していた経費も平成27年度に繰り越しが必要となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した経費は、平成27年1月の観測で使用した観測物資のニーオルスンから日本への輸送費として使用する。
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