研究課題
基盤研究(C)
本年度はイソプレンのNOx光酸化で生成する粒子状有機硝酸塩の加水分解速度を測定した。イソプレンのNOx光酸化実験を光化学チャンバーで行い、生成する二次有機エアロゾル(SOA)をフィルタに捕集した。SOAのフィルタサンプルを水に抽出して液体クロマトグラフ質量分析計で分析した。陽イオン化電子スプレーイオン化法により、2-メチルテトロール異性体およびトリヒドロキシニトロオキシ-2-メチルブタン(TNMB)異性体のナトリウム付加イオンを検出した。TNMB異性体は加水分解して2-メチルテトロールを生成した。TNMBの加水分解のみが2-メチルテトロールのソースだと仮定して、中性水溶液および42mMの硫酸水溶液(pH=1.08)中の全TNMBの加水分解速度を、それぞれ5.3E-6および3.8E-5 s-1であると評価した。硫酸水溶液中の加水分解速度を寿命に換算すると7.3時間に対応する。既往研究で予想されていた通り、硫酸の添加効果によって加水分解速度が約7倍に増加することが確認された。
2: おおむね順調に進展している
初年度の目標はイソプレンを用いた実験において二次有機エアロゾル中の有機ナイトレートの加水分解速度を測定することであった。本年度の研究によって、中性水溶液および42mMの硫酸水溶液(pH=1.08)中の全TNMBの加水分解速度を5.3E-6および3.8E-5 s-1と評価できたのでおおむね順調に進展している。
二年目はα-ピネンを用いた初年度と同様な実験を実施する計画であったが、予備実験の結果、α-ピネンでは初年度の手法と同様な実験は困難であることが分かった。一方、研究提案を行った頃に比べて二次有機エアロゾルの粒子相反応に関する理解が進み、過湿状態では本研究で取り扱っている水溶液相反応が、乾燥状態では表面反応が重要であることが分かってきた。二年目には、イソプレンを用いた実験を引き続き行い、乾燥状態における酸触媒粒子相反応について掘り下げて検討する予定である。これによってイソプレン二次有機エアロゾルの生成や変質に関わる粒子相反応を当初計画よりも総合的に理解することが可能になる。なお、三年目には粒子液化捕集装置を用いた研究を予定しているが、二年目の研究計画の変更は三年目の研究計画に影響を及ぼさない。
当初計画では、26年度には、二次有機エアロゾル前駆物質としてα-ピネンを用いて25年度と同様の研究を実施する計画であった。そのため、25年度予算には2年目の予備実験用の消耗品費を計上していた。しかし、予備実験の結果、ピネンを用いた場合、イソプレンと同様の実験は困難であることが分かったため、予定よりも早く予備実験を切り上げることになった。その結果、残額が生じることになった。上に述べた通り、二年目に計画していた実験が実施困難であることが分かった。また海外における研究動向の変化から、初年度に行ったイソプレンを用いた研究に関してより掘り下げた研究が必要になった。研究計画の変更にともない、初年度と同様の研究を実施する場合よりも多くの物品費(ガス、薬品などの消耗品費)が見込まれるため、次年度使用額を研究計画の変更にともなう物品費の増加分に充てる計画である。
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Atmospheric Environment
巻: in press ページ: in press
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