研究課題
26年度は、モノテルペンからの有機硝酸塩の速度測定を行う計画であったが、実験の結果、計画に適した有機硝酸塩と加水分解生成物の組合せを同定することができなかった。他方、25年度に行ったイソプレンのチャンバー実験では、過去に報告されたSO2添加によるSOA中2-メチルテトロールの生成がほとんど見られなかったことが未解決であった。原因は、25年度に行ったチャンバー実験が極めて乾燥した条件で行われていたためと予想された。そこで26年度は、テフロンバッグを用いて加湿条件 (RH~80%) におけるイソプレン/NOx光系、イソプレン/NOx/SO2光系、およびイソプレン/NOx/NH3光系の実験を行い、生成する2-メチルテトロールの粒子中存在比を測定した。2-メチルテトロールはイソプレン二次有機エアロゾルの分子マーカーである。2-メチルテトロールの粒子中存在比は、イソプレン/NOx光系、SO2添加系、およびNH3添加系の場合にそれぞれ7%、18%、および13%であった。SO2やNO3の添加によって2-メチルテトロールの存在比は増加した。25年度に行った乾燥系の実験ではエアロゾル中に2-メチルテトロールがほとんど生成されなかったことから、2-メチルテトロールの生成には水蒸気の存在が重要であることが示された。イソプレン/NOx光系で生成したエアロゾルを水に抽出し、水溶液中での2-メチルテトロールの生成速度に対する硫酸とアンモニア水の添加効果を調べた。25年度にも報告した通り、生成速度は硫酸の添加によって増加した。アンモニア水の添加実験は本年度新たに行ったが、生成速度がアンモニア水の添加によって増加することが明らかにされた。酸や塩基の添加によって2-メチルテトロール生成が促進されることから、2-メチルテトロールがエステルの加水分解によって生成することが確かめられた。
2: おおむね順調に進展している
初年度は、当初計画通り水溶液相におけるイソプレン由来有機硝酸エステルの加水分解速度定数を測定することができた。2年目に計画していたモノテルペン由来有機硝酸エステルの加水分解速度測定は、適切な生成物を見出すことができず行うことができなかった。しかし、初年度に行ったイソプレンのチャンバー実験の研究で未解決であった、チャンバー空気の湿度による生成物への効果を調べる研究を行い、新たな知見を得ることができた。
今後は、計画に沿って、時間分解測定が可能な分析装置を用いてイソプレン/NOx光酸化のチャンバー実験を行い、SOAが生成し始めたところでSO2を添加し、添加後の組成の変化について研究する予定である。
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Journal of Geophysical Research-Atmospheres
巻: 119 ページ: 13489-13505
10.1002/2014JD021937
http://www.nies.go.jp/rsdb/vdetail.php?id=100110