研究課題/領域番号 |
25340023
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
平山 仙子 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 主任研究員 (90359167)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メタン / 海洋微生物 / メタン酸化菌 / メチルホスホン酸 / エチルホスホン酸 |
研究概要 |
一部の海洋微生物が唯一のリン源としてホスホン酸類を利用できること、またその至適濃度について培養実験により確認した。実験には海洋性の好気的メタン酸化細菌3株(Methylomarinum属、Methylomarinovum属、Methylobacter属)、海洋性硫黄酸化細菌2株(Thiomicrospira属、Sulfurivirga属)を用いた。まずメタン酸化細菌3株がメチルホスホン酸をリン源として利用できることを確認し、その至適濃度範囲から1 mMを規定添加濃度とした。硫黄酸化細菌2株も1 mMメチルホスホン酸添加培地で良好に生育すること、また上記5株がメチルホスホン酸同様、エチルホスホン酸をリン源として利用できることも確認した。本結果から、予想していたよりも多くの海洋微生物がホスホン酸類をリン源として利用できると推察される。 次にホスホン酸類の利用に伴うガス生成の有無を確認するため、Methylobacter属細菌株およびThiomicrospira属細菌株を、エチルホスホン酸をリン源として密閉ガラスバイアル内で培養し、培養後の気相をガスクロマトグラフ(GC)により分析した。しかし気相からは、生成が予想されたエタンは検出されなかった。原因として、1, 細胞増殖に必要なホスホン酸量が少なく、生成するエタン量が検出限界以下である、2, エチル基が細胞に固定されるためエタンガスとして細胞外へ放出されない、という2つの可能性が考えられる。この2つの可能性を検証するため、今後、より高感度なGCによる再測定や、同位体標識基質を用いた実験により、ホスホン酸類が代謝される際の炭素の行方を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画通り、海洋性のメタン酸化細菌について、リン酸に代わる唯一のリン源としてのホスホン酸の利用とその至適濃度を確認できた。また計画には記載しなかったが、海洋における独立栄養細菌の代表として、硫黄酸化細菌についてもホスホン酸を利用することを確認できた。これは本研究を今後発展させる上で大変有用なデータである。一方、ホスホン酸利用(分解)に伴うガス生成の有無を見極める方法についてはまだ検討の余地がある。したがって総合的には、概ね順調に進展しているとの自己評価をつけた。
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今後の研究の推進方策 |
微生物のホスホン酸利用(分解)に伴うガス生成の有無を明らかにするため、ガスの検出を容易にするための培養系および分析手法の再考を行う。またメチルホスホン酸およびエチルホスホン酸の分解により遊離すると考えられるメチル基およびエチル基が、微生物によりどのように代謝されるのかを明らかにするため、同位体標識化合物を用いて解析を行う。微生物が有機リン化合物をリン源とする場合の、その炭素部分についての代謝に関する知見はないため、もし独立栄養微生物が有機リン化合物の炭素を細胞炭素として細胞に固定するならば、すなわちそれは従属栄養的な代謝を意味する。これは微生物生態学的には重要な意味を持つため、当初の研究目的とは外れるが解明すべき課題であり、可能な限り本研究で明らかにしたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究予算で購入を予定していた高額な試薬を、他の研究予算で購入できることになったため、次年度使用額が生じた。 これまでよりも解析予定の菌株を増やし、様々な系統の独立栄養微生物を使い、そのホスホン酸代謝特性を明らかにするために同位体標識基質の取り込み実験を行う。
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