研究課題/領域番号 |
25340023
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
平山 仙子 独立行政法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, 主任研究員 (90359167)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メタン酸化細菌 / ホスホン酸 |
研究実績の概要 |
唯一のリン源としてメチルホスホン酸およびエチルホスホン酸を利用することができる海洋性メタン酸化細菌、Methylobacter marinus MR-1株とMethylomarinum vadi IT-4株の全ゲノム塩基配列を解析した。これら2株のゲノム配列からホスホン酸代謝関連遺伝子を探索したところ、”アルキルホスホネート利用関連遺伝子phnA”としてアノテーションされている遺伝子のみが検出された。通常phnAはホスホノ酢酸分解酵素遺伝子のことを指すが、解析した2株から検出されたphnA遺伝子はホスホノ酢酸分解酵素遺伝子とは全く相同性がなかった。データベース上の配列との相同性を解析すると、多様な細菌が本メタン酸化細菌株と類似のphnA遺伝子を有していることが分かったが、この遺伝子産物の活性や基質を証明した研究はこれまで報告されていない。MR-1株とIT-4株のphnA遺伝子配列長はそれぞれ342 bpと585 bpと異なっているが、翻訳アミノ酸配列はidentityが35.1%、similarityが76.6%と高い相同性を示すことから、その機能に類似性があると推察される。またそれぞれの遺伝子について、同等の配列長の該当遺伝子がデータベース上で多数検出され、この未知の遺伝子が系統的に多様な細菌に分布していることが示唆された。これまでに知られているアルキルホスホネート分解酵素遺伝子は、14遺伝子からなるクラスターを形成している。しかしMR-1株とIT-4株から検出された遺伝子phnAはクラスター構造は形成していないと推察される。以上の結果から、メタン酸化細菌から検出されたphnA遺伝子は新規アルキルホスホン酸分解酵素であると推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この1年の間に全ゲノム塩基配列決定のための実験環境が整ったことにより、当初は計画していなかった菌株の全ゲノム塩基配列解析を行うことができた。その解析結果からホスホン酸代謝関連遺伝子を容易に見つけることができ、探索にかける時間と手間が省けた。
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今後の研究の推進方策 |
海洋性メタン酸化細菌MR-1株から検出された、新規アルキルホスホン酸分解酵素遺伝子と推察される遺伝子phnAについて、その産物が実際にメチルホスホン酸およびエチルホスホン酸分解活性を持つかどうか明らかにする。塩基配列を翻訳したアミノ酸配列には細胞膜貫通領域は見当たらないことから、phnA遺伝子産物は可溶性タンパクであると推察される。そこで、大腸菌を用いて大量発現し精製したタンパクを用いて、メチルホスホン酸およびエチルホスホン酸の分解活性、またそれに伴うメタンおよびエタンの生成の有無を調べるなどの方法を検討する。また、MR-1株やIT-4株などphnA遺伝子を有する細菌について、ホスホン酸類をリン源に生育させた際のphnA遺伝子発現量の増加を、定量PCR法により調べる。以上の方法により活性が認められた場合には、同位体基質を用いて生成するメタンおよびエタンがどのように代謝されるのか明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究予算で購入を予定していた試薬や機器を他の研究予算で購入できることになったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画では予定していなかった生化学的解析を追加的に行う予定なので、その解析に必要な試薬等の購入費用にあてる。
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