研究課題/領域番号 |
25340024
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
鬼塚 剛 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所, グループ長 (40399647)
|
研究分担者 |
吉川 裕 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40346854)
紫加田 知幸 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所, 研究員 (40603048)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 有害鞭毛藻 / 鉛直移動 / クロロフィル極大 / 海洋微細構造 |
研究概要 |
植物プランクトンの一種である有害鞭毛藻Chattonella antiquaの培養株を用いて、塩分成層が本種の日周鉛直移動に及ぼす影響を明らかにした。下層を高塩分水(塩分32)、上層を塩分条件を変えた低塩分水(塩分5、10、15、20、25、32)とした円柱水槽内の細胞密度鉛直分布の時間変化を観測した結果、上層の塩分が15以上の場合、昼間大部分の細胞が表層に集積したが、5および10の場合はそれぞれ塩分躍層の中部および上部に集積した。いずれの条件でも上昇・下降開始時刻に変化はなく、塩分成層が鉛直移動のリズムに影響しないことが示唆された。また、八代海を対象として、例年有害鞭毛藻赤潮が発生する夏季に、海洋微細構造を観測するための昼夜連続調査を実施した。流向流速・水温・塩分・蛍光強度・光強度・栄養塩・乱流シアーの鉛直分布の測定結果から、混合の指標である乱流エネルギー散逸率や鉛直渦拡散係数を算出するとともに、各種植物プランクトンの鉛直分布と海洋構造の対応関係を検討した。調査期間中には、低密度ながら渦鞭毛藻Ceratium furcaやC. fususが密度躍層を超えて活発に日周鉛直移動していた一方、10m深付近にChaetoceros spp.を主体とする珪藻類による顕著なクロロフィル極大層が形成されていた。本調査結果と簡易的な鉛直一次元モデルによる解析の結果、数日間のうちに珪藻類が栄養塩を取り込み、相対的に鉛直拡散係数の小さい亜表層に極大を形成したと推察された。上記の実験・観測結果は、植物プランクトン種遷移や赤潮形成過程を検討する上で重要な知見である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
有害鞭毛藻Chattonella antiquaの鉛直移動実験は当初の計画に沿って順調に進んでいる。八代海での現場調査も予定通り実施でき、海洋微細構造と植物プランクトンの鉛直分布の関係について重要な知見を得た。一方、LESによる3次元乱流場とそれに伴う鉛直混合過程の再現は実施に至っておらず、計算機環境を整えるに留まった。
|
今後の研究の推進方策 |
未実施だったLESによる計算に着手するとともに、室内実験による有害鞭毛藻遊泳速度測定、および海洋微細構造を観測するための現場調査を引き続き実施する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
主な理由は、計算機使用料を計上していたが使用しなかったためである。 次年度は当初の計画通り計算機使用料として使用する予定である。
|