研究課題
BCL11Bの転写因子としての機能解析を進めてきたが、新たにBCL11Bがクロマチン再構成複合体であるSWI/SNF複合体の一員として転写調節に関与するとの報告が有った。これに基づき、BCL11B陽性のヒトT細胞白血病由来MOLT4F細胞とBCL11Bを発現していないHCT116細胞にBCL11Bを導入して解析を試みた。核抽出物を調製し、グリセロール密度勾配遠心法で分画した結果、SWI/SNF複合体の構成タンパクが存在する分画にBCL11Bが存在することが確認できた。そこで、マウス個体を用いて同様の解析を試みた。Bcl11b野生型マウスから胸腺細胞を採集して、核抽出物を精製した後、グリセロール密度勾配遠心法で分画しSWI/SNF複合体構成タンパクとの複合体形成を解析した。Bcl11bはSWI/SNF複合体の主要な構成タンパクと同じ分画に確認され、Bcl11bがマウス個体においてもSWI/SNF複合体の一員として機能している事が示唆された。BCL11Bはハプロ不全ながん抑制因子で、ヒトの白血病やリンパ腫、大腸がんで変異が認められている。Bcl11bのヘテロKOマウスでは、放射線照射後の小腸陰窩細胞の回復に違いが認められる。Bcl11b野生型マウスに比べて小腸陰窩細胞の増殖抑制が掛りにくく、クリプトサイズが増加することが確認された。また、BCL11Bの点突然変異がSWI/SNF複合体から解離してしまう事は細胞系へのトランスフェクション実験で証明された。これらの事から、BCL11Bの減少や機能低下はSWI/SNF複合体を介する転写調節機能を阻害し、細胞増殖の制御機能を損なうことが示唆された。また、BCL11Bの点変異体がガンマ線照射によるp53-MDM2の周期変動に与える影響について、p53とMDM2の量的変動の解析を試みたが、BCL11Bの機能低下によるp53-MDM2の周期変動には明らかな違いを確認することが出来なかった。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
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