研究課題/領域番号 |
25340031
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
寺澤 匡博 大阪大学, たんぱく質研究所, 招へい研究員 (20389688)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | DSB修復 / M期 / XRCC4 |
研究概要 |
M期(細胞分裂期)は複製された遺伝情報を正確に分配する過程である。正確な染色体分配に失敗すると細胞死や染色体の異数化を招く。DSB(DNA二重鎖切断)は最も重篤なDNA損傷であるが、M期におけるDSB修復機構についてほとんど知見がない。申請者は非相同末端結合(NHEJ)因子XRCC4がM期で細胞周期特異的にリン酸化されることを見いだし、この時期のDSB修復に影響を与えていることが考えられた。このリン酸化の役割を明らかにすることにより染色体分配を保証する新規の機構を解明する。 M期におけるDSB修復について以下の項目が明らかとなった。1)M期に同期した細胞をエトポシド処理するとゲノム不安定化の指標の一つであるanaphase bridgeが有意に増加した。2)M期細胞のエトポシド処理において染色体異常が有意に増加した。3)コメットアッセイによりM期の細胞で修復は効率が低いが起こることがわかった。4)NHEJ因子、HR(相同組換え)因子のノックダウンではbridgeの抑制、HR、alternative-NHEJ両方に関わる因子のノックダウン細胞では増加がみられた。したがってM期では修復は抑制されているがある程度起こり、この修復がanaphase bridge形成の原因となり、ゲノムの不安定化を招くことが明らかとなった。さらにNHEJ、HRを抑制、A-NHEJを増加させることによって異常な染色体分配を防ぐ仕組みがあることが考えられた。 非リン酸化型XRCC4株を作製し、表現型解析を行ったところ、anaphase bridgeの形成が有意に増加した。コメットアッセイにより、非リン酸化型XRCC4発現細胞では修復が野生型より速いことがわかった。従ってXRCC4をM期においてリン酸化し、NHEJ抑制により染色体異常を防ぐ機構があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度実施計画の1)Anaphase bridge形成に関与するDNA修復経路の解明、2)XRCC4 のCDKによるリン酸化の役割については計画以上に進み、M期においてDSB修復はゲノム不安定化の原因となり、大部分は抑制されていることがわかった。XRCC4のリン酸化がM期のDSB修復を抑制し、正確な染色体分配に寄与していることが明らかとなった。論文作成に十分な学術的重要性を示すことができたので平成26年度作成予定だった論文作成を25年度中に行い現在論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
Anaphase bridge形成に関与するDSB修復経路の解明の学術的重要性が明らかとなり、論文投稿を行っていることから平成26年度はこのプロジェクトに集中し、さらに分子機構の理解を深めるために平成27年度の計画にあった生化学的解析を前倒しして行う。分裂装置との関係の解析も平行して行い、次年度に備える。
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