研究課題/領域番号 |
25340032
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
笹谷 めぐみ (豊島めぐみ) 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (80423052)
|
研究分担者 |
神谷 研二 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (60116564) [辞退]
飯塚 大輔 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (00455388)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 放射線発がん / ゲノム障害 / ゲノム修復 / 白血病 / 突然変異 / 線量率効果 / 低線量(率) / 動物モデル |
研究実績の概要 |
21世紀の社会では、原子力エネルギーや医療、産業等での放射線の利用が激増し、放射線の健康影響が問題となっている。さらに、東京電力福島第一原子力発電所事故(福島原発事故)では、放射線被ばくにおける科学的な発がんリスク評価が緊急の課題である。広島、長崎の原爆被爆者の疫学調査において、白血病ならびに胃がんや乳がんなどの一部の固形がんの発症率が高いことが知られている。また、白血病は固形がんと比較して、放射線単位線量あたりの発症リスクが極めて高いという特徴があるが、その詳しい機構は未だ解明されていない。 我々は、本研究において、原爆被爆者の疫学研究から得られた知見と我々のこれまでの放射線発がん研究から明らかに知見をもとに、「放射線が、BCR/ABL転座を持つ細胞に新たな変異を誘発させることが放射線誘発白血病発症の一因である」という仮説を提唱し、その解明を試みる。この仮説が正しいのであれば、BCR/ABL転座を持つ白血病モデルマウス(BCR/ABLTg/- マウス)は、放射線被ばくにより発がん高感受性を示すと考えられる。 これまでの本研究から、野生型マウス、BCR/ABLTg/- マウスを用いて放射線発がん実験を実施した結果、BCR/ABLTg/- マウスでは、放射線発がんに高感受性であること、放射線発がん感受性には、年齢依存性があることを明らかにした。そこで、今年度は、放射線発がん実験で得られた腫瘍を用いて、遺伝子変異解析を行った結果、BCR/ABLTg/- マウス特有の遺伝子変異を検出することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子変異解析の立ち上げに、当初の予定よりも多くの時間を費やした。しかしながら、その後の解析は順調に進行することができたため、今年度の研究は、おおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
我々は、本研究において、原爆被爆者の疫学研究から得られた知見と我々のこれまでの放射線発がん研究から明らかに知見をもとに、「放射線が、BCR/ABL転座を持つ細胞に新たな変異を誘発させることが放射線誘発白血病発症の一因である」という仮説を提唱し、今年度は、その解明を試みた。この仮説が正しいのであれば、BCR/ABL転座を持つ白血病モデルマウス(BCR/ABLTg/- マウス)は、放射線被ばくにより発がん高感受性を示すと考えられる。これまでの研究から、BCR/ABLTg/- マウスは野生型マウスと比較して、高頻度に腫瘍が発症することを明らかにした。今年度は、得られた腫瘍組織試料を用いて、遺伝子変異解析を行いBCR/ABLTg/- マウスに特有の遺伝子変異を検出した。これからは、野生型マウス、BCR/ABLTg/- マウスを用いた放射線損傷応答解析を行い、これまで得られた結果についての更なる分子メカニズムの追求を行いたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究では、遺伝子変異解析を行ったが、当初予定していたよりも安価な試薬を用いた解析方法を確立することに成功したため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度出た余剰金については、来年度のBCR/ABLTg/- マウスにおける放射線応答解析のための実験系の確立に充てる予定である。
|