研究課題/領域番号 |
25340041
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
根井 充 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, プログラムリーダー (10164659)
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研究分担者 |
王 冰 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, チームリーダー (10300914)
塚本 智史 独立行政法人放射線医学総合研究所, 研究基盤センター, 主任技術員 (80510693)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 放射線適応応答 / マウス胎児 / 発生異常 / 系統差 / 受精卵移植 / 母体内因子 |
研究実績の概要 |
放射線適応応答は、予め低線量放射線を照射しておくことにより、その後の中高線量放射線に対する抵抗性を獲得する生体防御機構である。本研究は、マウス胎児の発生異常を指標とした放射線適応応答に着目し、その機構を明らかにすることを目的とする。 これまで、マウス胎児の放射線適応応答には母体由来のエピジェネティックな因子が関与している可能性が示唆されている。これを確かめるため、本研究では、マウス胎児の放射線適応応答を発現する系統(ICR およびC57BL)の受精卵を発現しない系統(C3H)のメスの子宮に移植することによって得られる胎児、およびその逆の組み合わせで得られる胎児における放射線適応応答を調べる。これにより母体内環境因子の関与を明らかにする。また、母体内環境因子の関与が明らかになった際には、系統差と関連する血清因子を探索し、当該放射線適応応答の系統差への機能的関与を明らかにする。 平成25年度は、C3H 系統マウスの試験管内受精で得られた受精卵から発生した胎児では、C3H系統受容体を仮腹とした場合には放射線適応応答が誘導されない一方、ICR系統受容体を仮腹とした場合にはこれが認められることを明らかにした。平成26年度はICR系統マウスの精子と卵子を用いて試験管内受精させ、受精卵を同じICR 系統受容体およびC3H 系統受容体へ移植し、仮腹で胎児を発生させた。そして発生した胎児について放射線適応応答を評価した結果、ICR受精卵を同じICR系統受容体の仮腹で胎児発生させた場合は、ICRマウスの自然交配で発生させた場合と同様に放射線適応応答が誘導された一方、C3H系統受容体の仮腹で胎児を発生させた場合には放射線適応応答は観察されないことを明らかにした。以上の結果から、胎児マウスにおける放射線適応応答には、マウスの母体内因子が強く関与していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度当初の計画に基づき、予定していた実験をほぼすべて実施した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度までの結果から、マウス胎児の放射線適応応答における母体内環境因子の関与が明らかとなった。この結果を踏まえ、種々の血清因子を系統間で比較することにより放射線適応応答の系統差と関連するものを探索する。関連性が示唆された因子について、既に構築している胎児マウス指趾原基細胞培養系を用い、放射線適応応答における機能を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の計画が順調に進んだため、当初見積もっていた追加実験棟が少なくてすんだ。これにより当該助成金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
血清因子分析のための試薬(28千円)
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