研究課題
ブルーム症候群は、まれな常染色体劣性の遺伝性疾患である。低身長および癌体質が特徴であり、早老症の一種である。ブルーム症候群はBLMヘリカーゼの損失によって引き起こされる。BLMヘリカーゼの機能的な欠損は遺伝的不安定性を増加させることが知られている。BLMヘリカーゼは、DNA2本鎖切断(DSB)の修復の際に、不適当な相同組換え(HR)を抑えることによって遺伝的な安定化を保つとされているが、その機能は完全に解明されていない。また、HR以外の修復や、老化との関係も不明なままである。当該年度は、ヒトリンパ芽球細胞株TK6を用いて、ジンクフィンガー・ヌクレアーゼ(ZFN)技術により、BLM遺伝子を破壊し、BLM欠乏ヒトリンパ芽球様細胞株(BLM-TSEC)を樹立に成功した。この細胞は、自然小核、遺伝子突然変異、姉妹染色分体交換の頻度が野生型の10倍以上をあり、典型的なブルーム症候群の遺伝的不安定性の性質を示したため、理想的なブルーム症候群モデル細胞と言える。今後、この細胞にI-SceIによりDSBを発生させ、その修復機構を解析する予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
昨年度計画したBLMノックアウト細胞の作成は計画通り実行された。さらに、細胞の特徴まで明らかにしたことは計画以上の進展と言える。
作成したBLMノックアウトにI-SceIによりDSBを発生させ、その修復機構を解析する。BLM欠損細胞では相同組み換え修復機構が異常を示すことが予想され、それが抑制に働くのか?亢進に働くのか?また、その正確性が影響を受けのかは興味があるところである。本試験系は相同組み換え(HR)、非相同型接合(NHEJ)の両者を区別して解析できる世界的にもユニークな系で有り、その成果が期待できる。本年度中の学会発表、および論文作成を目指す。
BLMノックアウト細胞を作成するに当たり、5種類のZFNをデザインして研究を行う予定でったが、以前にデザインした2種類のZFNでノックアウト細胞の樹立に成功したため経費が節約できた。また、予定していた学会出張費は他の研究費で支出できたため経費が節約できた。
従来の研究計画に加えて、研究成果の発表として論文投稿の際の英文校閲費、および海外学会参加等に利用する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
DNA Repair
巻: 15 ページ: 21-28
10.1016/j.dnarep.2013.12.008
Mutation Research
巻: 769 ページ: 34-49
10.106/j.mrgentox. 2014.04.018