研究課題/領域番号 |
25340044
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
本間 正充 国立医薬品食品衛生研究所, 変異遺伝部, 部長 (30250179)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | DNA修復 / 遺伝的不安定性 / 相同組み換え / BLMヘリケース / ゲノム編集技術 |
研究実績の概要 |
ブルーム症候群(BS)は、低身長、紫外線感受性、不妊、がん体質を特徴とする遺伝性の早老症疾患の1種で有り、その原因遺伝子はRecQ3-BLMヘリケースをコードするBLM遺伝子である。BLMヘリケースは哺乳類細胞において、組み換え修復、特に組み換え中間体であるホリデー構造(HJ)の解離に関与しており、その損失は、姉妹染色分体交換(SCE)の亢進や、相同組み換え(HR)の異常をもたらし、遺伝的不安定性を引き起こすとされているが、BLMヘリケースの分子生物学的役割や、癌、早老症との関係は明らかでは無い。 前年度まではZFN技術によって、BLMノックアウトヒトリンパ芽球細胞(BLM-TSCE5、BLM-TSCER2)を開発した。これら細胞は、SCE、小核頻度、遺伝子突然変異が亢進しており、典型的なBS細胞の特徴を示した。当該年度は、このBLM細胞に、I-SceIを用いてDNA二本鎖切断(DSB)を導入し、その修復機構を解析した。 DSBの導入による突然変異の誘発率は、BLM細胞では野生型細胞に比べて2倍以上高かった。変異体解析の結果、数Mb程度の欠失がBLM細胞で特徴的に観察された。BLMヘリケースは、異常染色体分離を引き起こすAnaphase-Bridgeに結合し、その解離を助けることにより染色体安定性を保つと考えられているが、欠損細胞ではそれが不十分であるため、小核や欠失型突然変異の誘発を引き起こすものと考えられた。一方、BLM細胞でのDSBに対するHR修復は野生型細胞と同様に働き、LOH型の復帰変異体が高率に観察された。しかしながら、野生型のLOHは交差(CO)を伴わない、遺伝子交換が主体であったが、BLM細胞はCOを伴う復帰変異体がほとんどであった。このことは、BLMヘリケースは組み換え修復の初期過程には関与せず、後期のHJの解離に関与することを示している。BLM細胞でのSCEの亢進も、このHJの解離の異常が関係するものと考察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
BLMモデル細胞の開発とその特徴の解析は全て終了した。また、今期予定のDSBの導入に成功し、更に変異体の解析まで終了し、研究は予想以上に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
BLMノックアウト細胞を用いた実験は全て終了したので、今期はこの研究に関しては学会発表、論文投稿を行う。 また、この研究を発展させるため、他のRecQヘリケースであるWRN遺伝子や、相同組み換えに関与するGEN1やSLX4遺伝子に注目し、これらのノックアウト細胞をCRISPR/Cas9により作成し、哺乳類での組み換え修復機構の研究を更に推し進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月末にオーストラリアのメルボルンで開催された第14回DNA放射線損傷国際ワークショップに参加、研究発表を行ったが、その時の旅費、参加費が年度末であるため、まだ、支出に反映されていない。実質の差額は15万円程度と考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、論文を投稿中であり、差額は論文をオープンアクセス化するために利用する予定である。
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