研究課題/領域番号 |
25340046
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
山内 清志 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 教授 (50201827)
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研究分担者 |
西山 学即 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (10315666)
石原 顕紀 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (70432193)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 甲状腺ホルモン / ホルモン応答遺伝子 / 撹乱化学物質 / エピジェネティック作用 / ヒストン修飾 / RNAポリメラーゼII |
研究実績の概要 |
(1) 両生類オタマジャクシを用いたホルモン応答遺伝子の発現に影響を与える化学物質の作用: 両生類オタマジャクシを(i)未処理(コントロール)、(ii)甲状腺ホルモン、(iii)甲状腺ホルモン+塩素系除草剤イオキシニル(IOX)、(iv)甲状腺ホルモン+臭素系難燃剤テトラブロモビスフェノールA (TBBPA)に暴露させ、ホルモン応答遺伝子である甲状腺ホルモン受容体遺伝子(thrb)の発現レベルを検討した。(ii) 甲状腺ホルモン存在下では発現誘導が認められ、(iii)IOX共存下ではさらに発現促進が、(iv) TBBPA共存下では、発現抑制が認められた。これらの結果のうち、(iii)は、培養細胞で昨年度行った結果と異なっており、細胞(組織)特異的に撹乱作用が異なる可能性を示唆した。 (2)化学物質のエピジェネティックメモリーに与える影響: 標的遺伝子thrbプロモーター近傍のヒストンのアセチル化状態は、甲状腺ホルモンで増加し、化学物質を共存させても影響を与えなかった。ヒストンH3K4トリメチル化とH3K36 トリメチル化は有意に変化しなかった。RNAポリメラーゼIIの動員、RNAポリメラーゼIIS5のリン酸化およびRNAポリメラーゼIIS5のリン酸化はmRNAレベルとよく相関した変化を示した。 これらのことから、化学物質TBBPAとIOXは、甲状腺ホルモンの標的遺伝子のエピジェネティックな修飾を撹乱することでホルモン標的遺伝子の発現に影響を与えていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度はホルモン応答性の培養細胞を用いて化学物質の影響を検討し、今年度は両生類オタマジャクシを用いてほぼ同様の実験を検討した。予想に反して、培養細胞での結果と個体を用いた化学物質の影響は必ずしも同じではなかった。「ホルモン受容体にホルモンが結合」した後から「標的遺伝子の発現誘導」までのステップに、細胞(または組織)特異的な過程が存在するものと思われ、そのどこかが化学物質の標的になっているものと考えられた。これらの新規な発見をもとに、研究はおおむね計画通り進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 本研究で用いたホルモン標的遺伝子Thrbのプロモーター領域には、20個程度のCpGが存在している。また、この周辺にホルモン応答エレメント(TRE)があるため、この領域に焦点をあてて、DNAメチル化レベルを検討したい。共同研究者の西山氏と、バイサルファイトシークエンス法を予備的に検討し、培養細胞を用いた解析は現在進行中である。そこで、H26年度は両生類オタマジャクシを用いて、DNAメチル化レベルを調べる予定である。 (2) 培養細胞を用いた場合とオタマジャクシを用いた場合では、化学物質IOXのエピジェネティックメモリーに与える影響がまったく逆の結果となった。その違いがどこにあるかを検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で多用している定量PCR機器の消耗が激しく,科研費の初年度に修理・維持費を計上したが,平成25年度は故障しなかったため,その分が繰り越しとなった。平成26年度になり,徐々に機器の調子が悪くなって,修理となった。その費用が当初の予定より少なく済んだ。年度末ぎりぎりの会計処理であったため,その差額が残額となってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
定量PCR解析に用いる消耗品に充てる予定である。
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