研究課題/領域番号 |
25340049
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本薬科大学 |
研究代表者 |
北村 繁幸 日本薬科大学, 薬学部, 教授 (40136057)
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研究分担者 |
清水 良 広島国際大学, 薬学部, 助教 (00570491)
藤本 成明 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (40243612)
浦丸 直人 日本薬科大学, 薬学部, 講師 (90424069)
杉原 数美 広島国際大学, 薬学部, 教授 (20271067)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ブロム化難燃剤 / PCB / 甲状腺ホルモン撹乱 / 水酸化代謝物 / 代謝的活性化 / 内分泌撹乱作用 / 核内受容体 |
研究概要 |
臭素化難燃剤はパソコン、テレビ等の家電品や建材の難燃性を高めるためにpolybrominated diphenyl ether (PBDE)などが使用されていたが、その残留性から現在ではりん系難燃剤に置き換わっている。しかし、PBDEは環境中あるいは生体内に残存しており、PCBと同じく化審法の第一類に指定された。 これまでに、申請者はPBDEおよびPCBの内分泌撹乱活性を代謝的活性化の観点から検討し、これらの化合物の幾つかの水酸化代謝物が甲状腺ホルモン類似構造をとることで、甲状腺ホルモン受容体(TR)との親和性、甲状腺ホルモン依存性の細胞内蛋白質機能維持因子protein disulfide isomerase (PDI)と相互作用することを示した。しかし、これらの水酸化代謝物の内分泌撹乱に至る明確なるターゲットを示すには至ってない。 本研究では、さらに研究を進展させ、これらの水酸化体のTR以外の核内受容体を介した甲状腺ホルモン撹乱作用、甲状腺ホルモン産生に係わるiodotyronine deiodinase (IYD)あるいは消去に係わる核内受容体を介した甲状腺ホルモン代謝酵素系に対する影響を新たなターゲットとして捉え、これら化学物質のin vivo評価および放射線照射による複合影響をも加味し、PCBおよびPBDEの水酸化体の甲状腺ホルモン撹乱の全容を明らかにすることを目的とした。 25年度はこれらの水酸化代謝物の核内受容体を介した作用、IYDとの相互作用を中心に検討した。その結果、水酸化PCBおよびPBDEはTR以外の核内受容体に対するリガンド活性を示すことを見出した(Nakamura et al., 2013)。さらに、IYDに対して結合活性を示すことで、T4からT3への甲状腺ホルモンの代謝を撹乱することを見出した(Shimizu et al., 2013)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は水酸化PCBおよびPBDEの核内受容体に対する活性あるいはprotein disulfide isomerase, deionidaseとの相互作用を明らかにすることが出来、投稿論文も受理された(Nakamura et al., 2013; Shimizu et al., 2013)。しかし、予定していた核内受容体を介した作用を充分に明らかにすることが出来なかった。また、deionidaseの構造活性相関に関しても未解明の部分が残されている。 26年度はこの点を中心に検討を進め、より明確な水酸化PCBおよび水酸化PBDEの内分泌撹乱のターゲットの解明を進める。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、PCBおよびPBDEのthyroid hormon receptor (TR)およびestrogen receptor (ER)に対する作用の構造活性相関を提唱したが、今後は他の核内受容体(PXR, CAR, PPARsなど)に対する構造活性相関を明らかにする。さらに、各種核内受容体を介したステロイドホルモン代謝の撹乱に関する検討を始める。 Tetrabromobisphenol Aは一部TRを介してエストロゲン活性を示すことを見出しており(Fujimoto et al., J. Endocrin., 2004)、このTRのERとのクロストークの実態を、PBDEを用いて明らかにすると共に、他の核内受容体とのクロストークの実態を検討する。 Protein disulfide isomerase (PDI)には甲状腺ホルモンおよびエストロゲン結合部位がある。PCB、PBDEの水酸化体がどちらに優位に働くかを検討する。PDIはシャペロンタンパク質としての機能を持つ他に、タンパク質の構造の保持に働いており、水酸化PCBおよびPBDEの本酵素の撹乱に由来する細胞機能障害についての検討を行う。また、Iodotyronin deiodinase (IYD)阻害はT4からT3が生成されないことから、甲状腺ホルモンの機能が発現されないことに結びつく。これまで水酸化PCBおよびPBDEによるIYD阻害のスクリーニングを行ったが、さらに阻害機構および機能阻害による生体影響の解明を行う。 PCBおよびPBDEの水酸化代謝物を妊娠ラットに投与し、胎仔毒性について検討する。また、水酸化体のオタマジャクシ暴露後のカエルへの影響を見る。これまでの化学物質のミジンコを用いた生態系への影響評価(基盤研究(C)(一般)平成16-17年)をこれらの水酸化体へ進展させる。 新生仔への放射線照射実験を確立させ、ポジティブに出た物質について、甲状腺組織の病理学的な検討を加え、γ線被曝による化学物質の内分泌撹乱作用への影響(放射線による追加的リスク)を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
助成金の大部分を課題研究の遂行の費用に使用した。しかし、繰越金になった7,156円に合致する必要な物品がなく、7,156円を次年度繰越金になった。 翌年度の助成金と合わせて、課題研究を継続する費用にあてる。 26年度の助成金と合わせて、26年度の研究課題計画に従って、有効かつ効率的に使用して、課題研究を遂行する。
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