研究課題
平成25年度は、「化学物質過敏症」を訴える集団の日常生活中における揮発性有機化合物(VOC)曝露とその健康影響の実態をまず明らかにするため、主として、呼吸器中VOC濃度の測定、VOC総量(TVOC)の曝露濃度の基礎的検討(技術的安定性、再現性、測定感度等)を行った。それを受けて、今年度は、被験者の心拍変動のリアルタイム測定、胎動変化の検討を行った。呼気中VOC濃度の測定は、通常の呼吸状態から肺胞気とその血液中の気体を平均状態に近づけるため、10秒間息を止めてから、肺胞気採取器具に呼気を約1.0L吐き出したものを試料とした。その後は常法通り、ガスクロマトグラフ、質量分析計に導入した。その結果、ベンゼン、p-ジクロロベンゼン、イソプレンが、健常者と比してやや高い傾向を示したが、一部の先行研究で指摘されているようなトルエンの濃度にはやはり大きな差は認められなかった。VOCの体負荷量を曝露濃度の変化が心拍変動により得られる自律神経機能の変動への影響については、ホルター心電図においてLF/HFの解析、体動につては、DFAによりαを算出した。その結果、健常者、「化学物質過敏症」を訴える集団(CS群)共に、Total VOC濃度の変化量が大きさと自律神経の変動(心拍変動)が極めて相関することがわかった。また体動の変化については、睡眠中のαがCS群でやや大きい傾向が認められたが、統計学的な有意差は認められなかった。次年度は、日常生活中の活動量に関する基礎的な検討を試み、本症の病態にせまりたい。
2: おおむね順調に進展している
申請書に記載した「平成26年度の研究計画」の内容をほぼ満たし、曝露指標として、呼気中VOC濃度、TVOC濃度、TVOCピーク曝露濃度変化に関する基礎的データを増やす事ができた。また影響指標としてHF(副交感神経機能)及びLF/HF比(交感神経機能)の変動傾向に関する基礎的データも数多く得られ、次年度における研究計画の遂行が可能となった。
「化学物質過敏症」を訴える集団の化学物質曝露と心身相関に関する多くの情報を得るため、その曝露指標として、呼気中VOC濃度、IVOC曝露濃度、TVOCピーク曝露濃度変化(1分間での最大濃度変化)、TVOC移動平均曝露濃度のデータを継続して得る。健康影響指標として、HF(副交感神経機能)及びLF/HF(交感神経機能)の変動傾向に関するデータも継続して得る事により、呼気中VOC濃度と健康影響指標との関係から、体負荷量の影響、・TVOC曝露濃度と健康影響指標との関係から、濃度レベルの影響、・TVOCピーク濃度変化と健康影響指標との関係から、濃度変化の影響、・TVOC移動平均曝露濃度と健康影響指標との関係から、時間遅れ影響等の把握に関する情報を得ることに重点を置く。
研究の進展に伴い、当初予想し得なかった新たな知見が得られたことから、その知見を使用し十分な研究成果を得るために、当初の研究計画を変更する必要が生じたことにより、その調整に予想外の日数を要したため年度内に完了する事が困難となった。
新たな知見に含めた年次計画に則り、適正に支出します。
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