研究課題/領域番号 |
25340053
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
今岡 進 関西学院大学, 理工学部, 教授 (60145795)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Ref-1 / プロテインジスルヒドイソメラーゼ(PDI) / ビスフェノールA / HIF-1α / 甲状腺ホルモン受容体 |
研究実績の概要 |
本研究ではprotein disulfide isomerase (PDI)による核内因子,甲状腺ホルモン受容体(THR)及び低酸素感受性因子(HIF-1α)のチオールの酸化・還元による活性調節及びビスフェノールA(BPA)などの化学物質によるこれらの因子の活性調節機構について検討した。 GH3細胞は甲状腺ホルモンによりTHRを介して成長ホルモン(GH)を分泌する。一方、BPAはTHRのligandとして働くことが明らかになっており、研究代表者はBPAがPDIの活性を阻害すること、さらにPDIはRef-1を酸化することでTHRの活性を抑制することをを明らかにしている。本研究ではBPAをGH3細胞に投与して、GHの発現を調べた。低濃度のBPAではGHの発現は抑制されたが、高濃度ではGHの発現は促進した。BPA類はTHRのアンタゴニスト及びアゴニストの両方の報告があり、またPDI活性の阻害によるTHRの活性化もあるので、THR を介したGHの発現に対してBPAは複雑な作用をしていることが推測された。一方、PDIのRef-1を介したHIF-1αの活性調節についてであるが、本研究においてPDIが直接的にHIF-1αを調節している可能性を見出した。肝癌細胞Hep3BにおいてPDIを過剰発現するとHIF-1αのタンパク質発現量は減少したがPDIの活性変異体ではこの作用がなかった。さらに免疫沈降法によってPDIとHIF-1αの直接的相互作用が確認できた。HIF-1αはそのプロリン残基水酸化酵素(PHD)を介して酸素濃度によって発現が調節されている。PDIはそのジチオール酸化酵素であるERO-1を介して、酸素濃度によって活性が調節されているので、PDIによるHIF-1αの調節については慎重にその機構を解析する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先に述べたように、PDIがHIF-1αと直接的に相互作用しており、HIF-1αのタンパク質安定化にPDIの活性部位が関わっていることを見出してそのメカニズムを解析しつつある。さらにPDI以外にBPAに結合するPDI ファミリータンパク質としてERp29, TMX2を明らかにしており、これらのタンパク質の新規相互作用因子は現在LC―MSを用いて解析中である。これらの実験に対して結果を得るにはもう少し時間が必要である。BPAの細胞に対する影響についてはHep3B細胞におけるHIF-1αのタンパク質発現量低下やPC12細胞の神経突起形成阻害など、すでに明らかにしてきているが、これにPDIが関わっているかどうか、現在も検討中であり、さらに実験を重ねる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の成果を踏まえ、27年度においてさらに以下の検討を行う。 BPAのPDI活性阻害についての生理的影響については、神経細胞等を用いてさらに検討する必要がある。神経様細胞PC12の神経突起伸長がBPA及びその誘導体添加によって抑制されることを明らかにしているので、PDIのドメイン変異体等の過剰発現により、活性阻害と突起伸長阻害の関係を明らかにする。 PDIによるHIF-1αの発現調節についてはPDIの過剰発現がどのようなメカニズムでHIF-1αのタンパク質発現量を低下させているのかを明らかにしたい。さらにこの過程においてERO-1が関わっているのか、酸素濃度の変化はPDIの活性にどのような影響を及ぼしているのかを解明したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な試薬類を購入し、端数(200円未満)が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
200円未満のため、次年度に必要な試薬類の購入に充てる。
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