研究実績の概要 |
プロテインジスルヒドイソメラーゼ(PDI)が甲状腺ホルモン受容体(TR)の活性制御に関わっていること、環境化学物質であるビスフェノールA (BPA)がPDIと結合してその活性を阻害することをこれまでの研究で明らかにしている。本研究ではPDIによる核内受容体TRやBPAがその蛋白量を低下させることを明らかにしている低酸素感受性因子HIF-1αなどの核内因子の活性をどのように制御し、さらにBPAがこれらの核内因子の活性にどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目的とする。本研究の最終年度である本年度は、上記のメカニズム解明についてGH3, PC12, Hep3B細胞を用いて検討した。GH3細胞においては低濃度10μM BPAではGHの分泌阻害が起こったが、50μM以上の高濃度ではGHの分泌を促進した。一方、PC12細胞においてはNGF非存在下でBPAが神経突起の伸展を誘起するという報告があるが、本研究では、NGF存在下にBPAを添加すると神経突起伸展の阻害が起こった。BPAが低酸素応答を抑制することは既に述べた通りであるが、PDIの過剰発現によってHIF-1αの低下、低酸素応答の低下が起こった。さらに、今回の研究によって、これらの細胞にBPAが一酸化窒素(NO)を発生させ、NOがPDIに結合すると、その酵素活性が低下すること、NOの発生はPC12細胞の神経突起伸展を阻害することを明らかにした。これらの現象をPDIの活性やBPAによる活性阻害のみで説明することはできないが、この研究をさらに発展させてゆけば、PDIの新たな機能解明やBPAの新たな生体への影響を明らかにできると考えている。実際に現在別途研究を進めているPDIファミリータンパク質に属しているTMXはBPAとの結合能力を有し、さらに核内因子の核内移行に関わっていることを明らかにし、そのメカニズムを解析中である。
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