研究課題/領域番号 |
25340055
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
田中 大祐 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (40360804)
|
研究分担者 |
加賀谷 重浩 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (50272894)
中村 省吾 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (60134996)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | バイオエアロゾル / 大気 / 細菌 / 真菌 / 微生物群集構造 / 定量 / 季節変化 / 環境適応能 |
研究実績の概要 |
大気環境中に存在する細菌は,太陽光に含まれる紫外線,乾燥,高温・低温や,それらによって細胞内に発生する活性酸素種など,様々なストレスに晒されている。また,大気から単離された細菌ではコロニーが着色する色素産生菌が多く,これらの色素は環境ストレスから細胞を保護する役割を果たしていると考えられる。2011~2013年に富山大学理学部屋上の大気から単離された細菌約300株では,約70%が黄色,橙色,赤色の色素を産生していた。今年度は,大気から単離された色素産生細菌について,紫外線,乾燥,活性酸素種の一種である過酸化水素に対する耐性の評価を中心に研究を進めた。富山大学理学部屋上の大気から単離した色素産生細菌6株は,紫外線(UV-B,UV-C),過酸化水素,乾燥などの環境ストレスに対して耐性を示し,大気環境中での生存に適した性質を持っていると考えられた。単離菌の環境ストレス耐性の程度は,コロニーの色によって違いが見られ,赤色>橙色>黄色の順であった。また,これらの単離菌の中で,赤色色素産生菌であるDeinococcus sp. 4-45は,太陽光に含まれるUV-Bに対して高い耐性を示し,様々な環境ストレスに対して極めて高い耐性を持つD. radiodurans R1株よりも高かった。さらに,4-45株は,16S rRNA遺伝子塩基配列や生化学性状などから,新種の可能性が高い。今後は,DNA修復,抗酸化,色素産生に関わる酵素や,それらの遺伝子について研究を進めたいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リアルタイムPCR法による細菌・真菌密度の定量とPCR-DGGE法による微生物群集構造解析はおおむね順調に進んでいる。さらに,次世代シークエンサーを用いて16S rRNA遺伝子を標的としたメタゲノム解析も行った。また,培養法で大気から単離した細菌について,紫外線,乾燥,活性酸素種などの環境ストレスに対する耐性を調べる研究も,順調に進んできている。これらの研究成果の一部について,国際誌に論文が掲載された。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も定期的に大気試料のサンプリングを行うと共に,リアルタイムPCR法による特定分類群の定量を進める。また,アンダーセンエアーサンプラーを用いて粒径別に捕集した大気試料についてPCR-DGGE法や次世代シークエンサーを用いた微生物群集構造解析を行う予定である。今年度は本研究の最終年度であるので,これまでに分子生物学的手法と培養法で検出した微生物種の系統関係を整理すると共に,検出された微生物種が,生態系,ヒトの健康,農業に影響を及ぼす可能性の有無を,文献等を参考に評価する。
|