研究課題/領域番号 |
25340058
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松井 利仁 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00219370)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 交通騒音 / 健康影響 / DALY / 睡眠障害 / 心疾患 |
研究概要 |
平成25年度は,道路交通騒音を対象に,騒音マップの作成手法の確立を行なった。我が国だけでなく,諸外国も含めた様々な騒音伝搬予測モデルを比較可能なこと,市販数値地図および国土地理院から公開されている数値地図を利用可能なことを条件として,騒音マップ作成ソフトウェアを選定・購入した。騒音マップ作成対象として札幌市北区を選択し,2種類の数値地図を入手した。 まず,騒音伝搬予測モデルを検討した。我が国では,日本音響学会が提案しているASJ-RTN Modelが広く利用されているが,この予測式は道路交通騒音のみを対象としており,周波数別の騒音伝搬予測ができないという欠点がある。音源の周波数特性の違いを考慮することができず,鉄道騒音や航空機騒音はもちろんのこと,工場騒音や建設作業騒音への適用もできない。本研究では,我が国での利用実績を考慮して,ISO 9613を騒音伝搬予測モデルとして採用することとした。ただし,道路交通騒音の音源の特性については,ASJ-RTN Modelに含まれるデータを利用することとした。 次に,利用する数値地図について検討した。騒音マップを作成するには,個々の住居の形状の情報が必要であり,我が国で利用可能な数値地図は限定される。国土地理院が無償で公開している数値地図は,住居の高さ情報が含まれておらず,都市域の騒音マップ予測において誤差の生じる可能性がある。市販されている数値地図を用いて,実際の住居高さを考慮した場合と一律に2階建てとした場合を比較したところ,高さ1.5mでの騒音マップ作成においては,国土地理院の地図も利用可能であることが明らかになった。また,建物による反射は3回程度を考慮すれば,ほぼ十分な予測精度が得られることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者が大学を移動したことに伴い,新たに騒音マップ作成ソフトウェアを購入し直す必要のあることが,ソフトウェアのライセンス契約条項より明らかになり,騒音マップ作成以外の研究項目から研究を開始せざるを得なかった。しかし,研究費の前倒し請求が認められたことにより,ソフトウェアを購入することができ,数値地図を用いた騒音マップ作成が行えるようになった。当初,研究の進捗状況は大きく遅れることとなったが,予定していた道路交通騒音の予測に関しては,事前準備が整っていたこともあり,ほぼ計画通りの成果を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では,道路交通騒音のみについて検討を行なっており,鉄道騒音や航空機騒音の騒音マップ作成のためのノウハウを集積する必要がある。また,広域(例えば札幌市全域)の騒音マップ作成のためには,かなりの計算時間を必要とすることが明らかとなっており,欧州のように,国全域での騒音マップ作成を目標とすると,計算時間短縮のための方法を追加検討する必要があると考えられる。 鉄道騒音について,我が国では音源の情報が乏しく,現在広く利用されている手法では欧米で作成されているような精度での騒音マップ作成は困難であると考えられる。諸外国の音源データベースも含め,利用可能な情報の集約を行い,鉄道騒音の騒音マップ作成のためのノウハウを蓄積する。 航空機騒音について,民間航空機については既存の音源データベースが利用可能であり,飛行経路などの情報が得られれば騒音マップを作成できる。しかし,軍用機についての情報は不十分であり,軍用機が利用する空港周辺の騒音マップの作成可能性については 検討を要する。騒音マップ作成のために最低限必要な情報を得られるかどうか,既存の実測値なども含め検討を行なう。 最終的に,DALYを計算するには,騒音マップから曝露人口を推定する必要がある。公開されている情報,および市販数値地図の情報などを用い,適切な推定方法の検討を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
前倒し請求により,騒音マップ作成のためのソフトウェア(約150万円)を2月に購入したが,この決済が3月となったため,次年度4月の支払いとなり,次年度に比較的大きな剰余金が発生した。 上記のとおり約150万円を既に4月に支払い済みである。残りの剰余金と26年度助成金は,研究成果の公表のための学会参加旅費や調査旅費,数値地図等の購入に利用する予定である。
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