前年度,騒音マップと字別人口分布から道路交通騒音によるDALYを算定する際の字内建物への人口配分方法について複数の方法を検討し,対象とした札幌市北区においては,広域でのDALY算定において人口配分方法の差は大きな影響を及ぼさないことを確認した。 当該年度は,札幌市中央区および北広島市など複数の地域を対象に同様の検討を行ない,高層建築物の多寡に関わらず,簡易な人口配分方法でもDALYの算定に大きな影響を及ぼさない事を確認した。これにより,騒音マップ作成の際に利用する建物輪郭を含む詳細マップとして,必ずしも建物高さ情報が必要でないことを明らかにできた。これまでの成果に基づき,無料公開されている地図・人口情報を用いて,札幌市全域の道路交通騒音による騒音マップの作成及びDALYの算定を行なった。 また,航空機騒音の騒音マップ作成に関して,目視による飛行経路情報と,年間の騒音モニタリング情報を組み合わせることにより,年間の飛行経路情報を予測し,騒音マップを作成することを試みた。その結果,飛行経路がある程度固定されている場合,飛行経路をモデル化することにより,十分な精度で騒音マップが作成可能と考えられた。国内の飛行場においては,全ての航空機についてADS-Bの位置情報は得られないが,一部の航空機の飛行経路と騒音モニタリング情報を利用すれば,年間の騒音マップを作成できると考えられる。 なお,飛行場近傍においては,飛行時の騒音だけでなく,タキシングや離陸直前の騒音評価が不可欠であること,飛行場によってはエンジン調整などの影響を評価に含める必要のあることも明らかになった。試算した騒音マップに基づいて,DALYの算定を行なったところ,夜間に離着陸のある飛行場では,広範囲の周辺住民に健康損失が生じており,1事業場による健康影響としては非常に大きなDALY値の算定されることが明らかになった。
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