研究概要 |
ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの原料であるトルエン-2,4-ジイソシアネート(TDI)、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)、無水フタル酸(PA)、p-フェニレンジアミン(PEA)、ホルムアルデヒド(FA)、グルタルアルデヒド(GA)、アセトアルデヒド、無水マレイン酸、メチルアクリル酸等を対象とする。樹脂(プラスチック)原料とHSAを種々の条件下で反応させ、それぞれの化学物質に対する診断用抗原を作製した。続いて、ニトロセルロース膜に化学物質に対する診断用抗原をスポットし、150名の一般人の血清と反応させ、さらに蛍光標識した抗ヒトIgG抗体を用いて、それぞれの化学物質に対する特異的IgG抗体の保有率を調べた。 また、樹脂(プラスチック)原料を取り扱う作業者について、作業内容とアレルギー症状の有無についての調査を行った。末梢血中の白血球数、白血球分画、血清中の非特異的IgE、吸入および食事アレルゲンに対する特異的IgE、サイトカイン(IL-1β, Il-2, IL-4, Il-5, IL-6)、コルチゾール、総カルチニン、遊離カルチニン、アシルカルチニン、リンパ球サブセット(CD4, CD8, CD4/CD8比)を調べた。さらに上記と同じ方法で種々の化学物質に対する特異的IgEおよびIgGも調べた。樹脂(プラスチック)原料を取り扱う作業者の血清から種々の化学物質に対する特異的IgEは検出されなかった(検出感度以下)が、IgGは検出された。化学物質特異的IgGの有無とアレルギー症状の有無、白血球数、白血球分画、吸入および食事アレルゲンに対する特異的IgE、リンパ球サブセット(CD4, CD8, CD4/CD8比)との間には関係は認められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は前年度に引き続き、引き続き対象者の募集を行い、樹脂(プラスチック)原料を取り扱う作業者、アレルギー患者、学生、一般人(年齢20~40歳程度)、合わせて1,000名以上の参加者からアレルギー疾患やアレルギー症状の有無、生活環境における樹脂(プラスチック)などに関する自記式質問票の回収、血清採取を行う。また、トルエン-2,4-ジイソシアネート(TDI)、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)、無水フタル酸(PA)、p-フェニレンジアミン(PEA)、ホルムアルデヒド(FA)、グルタルアルデヒド(GA)、アセトアルデヒド、無水マレイン酸、メチルアクリル酸等の樹脂(プラスチック)原料でヒト血清アルブミン(HAS)を処理して種々の化学物質- HSA付加体を作製する。これを抗原として調査対象者血清中の化学物質特異的抗体の有無を調べる。続いて化学物質ごとの特異的抗体保有率を明らかにするとともに、化学物質特異的抗体とアレルギー症状との関係などについて統計学的に検討する。 平成27年度以降も引き続き、対象者の募集、血清中化学物質特異的抗体の測定、総IgG,・総IgE・花粉や食材等に対する特異的IgEの測定、さらには生活とアレルギーに関する質問票調査を行う。また、化学物質特異的抗体とアレルギーとの関係などについて統計学的に検討を行い、化学物質特異的抗体の健康影響評価における意義について解明する。さらに化学物質-HSA付加体を二次元電気泳動にて分離し、血清を用いたウェスタン・ブロットにより反応するスポットを見出す。次に、このスポットを加水分解してMALDI-TOF-MSにより質量分析を行う。最終的にはエピトープと考えられる化学物質-HSA結合を同定する。
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