研究課題/領域番号 |
25340065
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本保健科学大学 |
研究代表者 |
高橋 徹 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (70369122)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ミクロシスチン / シアノトキシン / シアノバクテリア / 有明海 / 諌早湾 / 生物濃縮 / 生態系サービス |
研究概要 |
【調整池、有明海と周辺生物のモニタリング】前年度と同様に継続している。但し、24年度まで実施した、B1地点底泥表層のマスバランス測定を目的としたコアサンプリングは止め、現在解析中である。そのかわり、26年度からはS!!地点の底質中MCs定量は深度4cmまで1cm毎に実施することとした。 【排水拡散調査】調整池からの排水をMCsをトレーサーとして把握する調査を24年度に引き続き実施した。24年度分の一部は論文化されたが、残りと25年度実施分については解析中で、今秋の学会で発表予定である。 【水と底質中のmcy遺伝子定量】一年分の水サンプルを濾過したフィルターを凍結保存している。この一部を使用して、RT-qPCRによる定量を試みたところ、問題なく実施できる事が確認できたため、全サンプルを一気に実施すべく準備中である。検量線作成に必要な標準株(NIES834)の頒布を国立環境研究所に依頼し、培養準備中である。続いて分解酵素遺伝子定量をおこない、凍結保存している調整池と海域の底質についても逐次実施してゆく。【干潟環境調査】別グループが同様の調査を実施している事が判明したため、南部排水門外瑞穗海岸の海苔漁場に塩分水温データロガーを設置して、環境変動と海苔の状況のモニタリングに一部変更した。同所における潮間帯の簡易調査は実施している。自動モニタリングは継続中である。【開門前後の環境変動比較】平成25年12月20日が確定判決期限であったため、前後の環境変化を詳細に把握する調査準備を整えていたが、諸般の事情で実施されていない。法治国家において確定判決は実施されるはずという前提に基づく判断であったが、事態が社会的・政治的要因に依っているため、自然科学研究者の立場では準備して待機するしか方法がない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由1:開門前後の比較調査は開門が実施されてないため実現してない。 理由2:3月中に投稿予定の論文原稿があったが、直前に投稿先を変更したため、年度を超えた。図表も文章も全て完成しているため、まもなく投稿予定。
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今後の研究の推進方策 |
開門(海水導入開門)は自然とは別の条件に支配されているが、法的に確定された事項なので必ず実施されるという前提で準備を怠らないようにしたい。開門された場合には、これまで蓄積したデータと比較するため、環境と生物データを可能な限り細かい間隔で採取する。特に早期に変動が予測される項目(プランクトン組成、底質、底生生物)に集中したサンプリングを実施したい。 一方、開門されない期間も遂行できる調査・実験として、ミクロシスチン合成・分解遺伝子の定量に取り組みたい。昨年度でミクロシスチン合成遺伝子定量の手順が明らかとなったため、凍結保存している濾過フィルターの全解析をおこない、通年の遺伝子量変動を明らかにする。同時に、分解酵素遺伝子も定量する。その後、底質の凍結サンプルについても同様の処理をおこない海域の底質に残留しているデータと付き合わせて諌早湾内のみならず有明海全域のMCsのマスバランス推定を目指したい。 なお、これを補助するデータを得るために室内における分解実験も実施したい。 簡易的な実験は既に行っており、20˚C以下で分解の進行が止まる事が明らかになっているが、遺伝子の発現レベルで押さえた実験まで発展させたい。ただし、これは最終年度にまたがると思われる。 さらに、瑞穗海苔漁場に設置したデータロガーの解析をおこない、排水と海苔漁業や潮間帯の環境との関連を示す基礎データを得たい。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末に調査を予定していたが天候不良で26年度に持ち越したため。 野外調査回数は開門の有無により左右されるが、野外調査と室内実験の労力はトレードオフの関係にあるため、実情に即してバランスをとりながら進めてゆきたい。
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