研究課題
2010年福岡高裁判決は「遅くとも2013年12月10日以降5年間の潮受堤防の水門開放」を命じた。この判決は確定され、司法の常識においては「再審」以外のいかなる理由においても覆る事はないと考えられた。当研究はその事を前提として立案されたものだが、研究終了時においてもついに海水導入は実現せず、政治的課題や金銭補償の問題として報道されている。自然科学研究者としては政治経済的問題に関与する立場になく、当初立案した計画通りの調査実施は不可能となった。しかし、限られた条件の中で、今後の開門調査時に有効と思われる、調整池と周辺海域の環境及び生物データを蓄積出来た。今後、開門調査が実施された場合に重要な基礎資料となる筈である。2014-15年にかけては夏期の天候が落ち着かなかったこともあり、有毒シアノバクテリアの発生量は少なかったが、調整池と海域の底質、周辺の水生生物へのミクロシスチン(MCs)の蓄積はなくならなかった。これは、一部で言われているほどMCsの分解が進行していないためと思われた。MCsを含む調整池の底泥で室内分解実験をおこなったところ、20;C以下では分解が止まり、むしろMCs濃度が上昇した。MCs合成酵素遺伝子mcyDおよび、分解酵素遺伝子mlrAをRT-PCRで定量したところ、予想通り、20;C以下では分解が止まっている事がわかった。一方、mcyDは低温でも一定量検出された。また、シアノバクテリアを含む調整池の水を海水と混合した場合、シアノバクテリアは凝集沈殿したが、細胞はそのまま生き続けた。つまり、排水に含まれたミクロキスティスは海域で増殖する事はないにしても、一定期間泥で生き続け、MCsを産生している事が示唆された。短期排水調査を含め、排水による広域汚染と生物濃縮(残留)が確実となった。この結果の一部は既に論文等で報告し、さらに詳細を追加報告する準備中である。
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日本の科学者
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