研究概要 |
本研究は都市ごみ等の溶融処理過程でCaO(CaCO3)あるいは脱硫過程で生成するCaSO4, CaS等のSiO2-Al2O3-CaO系溶融スラグへの溶解挙動解明および溶解速度式の導出を目的としている. 本研究遂行に当たり,本年度はCaCO3, SiO2, Al2O3試薬粉末をスラグ模擬試料に選び,種々の重量組成に調整した後,CaCO3粒子を加えてN2雰囲気下でのCaO粒子の溶融スラグへの溶解量の経時変化を測定した.スラグ溶融開始後,所定時間ごとにアルミナるつぼを加熱炉から取り出してN2雰囲気下で急冷した後,スラグ固化体中に残存する未溶解のCaを遊離Caとしてエチレングリコール法に基づいて定量し,カルシウム化合物の溶融スラグ内への溶解量の経時変化を調べた.実験パラメータとしてはCaCO3粒径,スラグ組成(塩基度, C/S比),溶融スラグ粘度,溶融温度を検討した. 本実験ではSiO2-Al2O3-CaO系模擬スラグはいずれのスラグ組成においても1723 Kでは実験開始後5分程度でほぼ均一溶解することが認められたことから,加熱条件は1723, 1748, 1773 Kを選んだ.その結果,CaO-Al2O3-SiO2系スラグ中での遊離CaOの残存率を粘度と溶融温度のパラメータとして速度論的検討を行った結果,(1) CaCO3は1100 K付近で脱炭酸化して遊離CaOとなった後,スラグ内で他成分と複合酸化物を生成しつつ溶融する, (2)CaOの溶解速度は界面とスラグ本体の間の濃度差, およびスラグ粘度に影響をされることなどを明らかにした.またCaOの溶融スラグへの見かけの溶解速度定数はSiO2-Al2O3-CaO系模擬スラグ中ではスラグの粘度および溶融温度と直線的関係を示し,溶融温度が高く,粘度が低いスラグ(C/S比が大きい)ほど大きくなった.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,スラグ固化体中の遊離カルシウムの定量とその前処理であるスラグ微粉砕の効率化が必要とされていたが,本年度予算によって購入した卓上ローラーミルによって研究を効率的に進めることが可能になった.一方,平成26年度および27年度の当初計画では,CO-CO2-N2雰囲気下でのCaSO4, CaS, AlのSiO2-Al2O3-CaO系溶融スラグへの溶解挙動の検討を予定していたが,これまでの予備検討によって溶融スラグ中に未溶解で残存するCaOおよびCaSを正確に区別して分析することは困難であることが判明し,平成26年度研究計画においてその対策について検討を進めている.また,平成27年度実施予定の溶融スラグへのAlの溶解実験では,スラグ固化体に含まれる微量Alの定量化が困難と予想され,当該年度に対する当初研究計画は現在,変更を予定している. 平成26年度および27年度の当初研究計画の変更に伴い,平成26年度では平成25年度に実施したCaO粒子のSiO2-Al2O3-CaO系溶融スラグへの溶解速度解析をさらに進め,溶融スラグ粘度とCaO濃度の影響を分離することによって,CaOの溶融スラグへの溶解速度式を導出するための実施計画を予定している.具体的には,スラグ粘度の調整用アルカリ成分として,MgOを加えたSiO2-Al2O3-CaO-MgOの4元系スラグを用いて各種溶融スラグ粘度に対するCaOの溶解速度解析を行うことを予定している.さらに,都市ごみ溶融スラグには比較的多く鉄分(5-10%)が含まれており,本研究では鉄分(FeO, Fe2O3)の共存によるCaOのSiO2-Al2O3-CaO-FeO系溶融スラグへの溶解速度測定,さらには溶解速度解析を計画している.
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