研究実績の概要 |
昨年度は,光化学還元を利用してFe3+をFe2+に還元し,フェントンサイクルを促進させることで1,4-ジオキサンを低濃度まで分解することに成功した。本年度は,Fe3+を電気化学還元によりFe2+に還元し,フェントンサイクルを促進させる手法について検討した。電極(カソード)には,水素の過電圧が高く,酸性下でも腐食されない活性炭を使用した。アノードは白金ワイヤとし,二槽式の電解セルでカソード槽内においてジオキサンの分解を実施した。本手法を適用することにより,40 mg/Lのジオキサンは継続的に分解され,150 minで0.5 mg/Lまで低減できた。投入するFe3+濃度とH2O2濃度の影響を検討したところ,特にFe3+濃度の影響が大きいことが分かった。これは,Fe3+の還元速度がFe3+濃度に比例するからである。既往の研究から選定した反応式と電極上でのFe3+の還元反応速度式を用いて,活性ラジカル種を含む反応モデルを構築した。構築した反応モデルを用いたシミュレーションによる計算で,種々のFe3+およびH2O2濃度でのジオキサンおよびH2O2濃度の経時変化を良好に推定することができた。シミュレーション結果より,Fe2+の濃度は分解後期で高くなることが明らかとなった。この原因は,分解後期にはOHラジカルが低濃度になったジオキサンよりもH2O2と優先的に反応することにより,Fe3+と還元剤となるHO2ラジカルを生成するため,Fe3+の還元速度が高くなるからである。またOHラジカルに関しても,分解後期で濃度が上昇していたが,これはOHラジカルと反応性が高い1,4-ジオキサンが消費されるため,OHラジカルが蓄積された結果である。このように,反応モデルに活性ラジカル種を組み込むことで,ジオキサンの分解挙動を精度よくシミュレートすることができ,最適な反応条件の選定および反応器設計に役立つと言える。
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