我々はこれまでにメタノールを原材料として触媒法により発生させる混合ガスによる滅菌・核酸分解装置(Biovector®)を開発してきた。基盤研究(C)(平成25~27年)において課題となっていた2つのテーマに対し、極めて興味深い結果を得た。すなわち(1)効能評価においては、日本薬局方に定められた各種の標準指標菌株を対象とした効能試験を実施し、「最終滅菌法」とされる無菌性保証水準(sterility assurance level: SAL)である10-6(100万分の1)を達成することを明らかにした。また核酸分解能の評価においては遺伝子治療への応用が期待されている腫瘍溶解性コクサッキーウイルスを用いて効能試験を実施し、極めて優れた核酸分解能を示すことを明らかにした。5分以内に不活化 これらの滅菌並びに核酸分解能は、時間・温度・容量・フェーズ(乾燥/水溶液)依存性であることも明らかになった。また(2)安全性評価では、実験用小型チャンバーを用いた反応ガス成分および廃棄処理後の排ガス成分分析試験の結果から、排気ガス処理後の排ガスの成分分析並びに培養細胞を用いた排気ガス曝露試験による安全性を確認した。加えて、発生ガス成分中の滅菌・拡散分解効果をもたらす主要な3成分の特定に成功し、効能がこれらの成分の相乗的作用によりもたらされることを明らかにし滅菌及び核酸分解に対する作用メカニズムの一端を解明した。これまでの小型試験装置による安全性、有効性に関しての一定のエビデンスが得られたことから、今後実用化を目指した開発研究へ応用発展させていきたいと考えている。すなわち医療機器への組込み型機器滅菌装置への応用を念頭に置いているが、それに先行して今後の適応拡大に向けての基礎になる「空間型」の滅菌・核酸分解装置としての実用化に向けた安全性評価を強化し、管理・運用指標の策定の課題に取り組みたい。
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