研究課題/領域番号 |
25340077
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大分工業高等専門学校 |
研究代表者 |
軽部 周 大分工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (70370054)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境負荷低減 / ドライ加工 / 歯車 / 高硬度鋼加工 / 工作機械 / 振動切削 / 衝突 |
研究概要 |
本研究は,高周波焼入れ処理後の材料に対しドライホブ加工を行うという新しい歯車加工方法を提案し,最適加工条件を決定するものである.本手法は歯車生産におけるコストおよび切削油による環境負荷を大幅に低減させるが,工具寿命の低下などの問題があるため,最適加工条件の探索が非常に重要な課題となっている. 平成25年度は,熱処理後ドライホブ加工の実験,モデル開発,超音波ドライホブ加工装置の検討を行った.熱処理後ドライホブ加工の実験では,高周波焼入れにより硬度の異なる5種類の歯車材料(炭素鋼S45C)を作成し,ドライ環境で歯切り加工をする際の切削力を歪みゲージにより測定した.今年度の成果として,従来の動歪み計による測定系を見直し,ノイズ対策を考えたデータ集録環境を新たに構築したことで,データ取得時の大幅なノイズ低減に成功したことが挙げられる.その結果,再現性の高い切削力データが取得できた.傾向として工作物硬度と切削力は正比例の関係にあり,モデルでの再現が可能であった.一方,工作物が生材と同程度の低硬度の場合,切削力がHRC55程度の高硬度材の場合と同レベルの高い切削力が得られたため,その原因を切りくずの状態から推定した.歯車の表面粗さは,工作物硬度HRC44以上でほぼ一定であった. 以上から,工具寿命を延長するには,切削力が小さく高精度加工のできるHRC44程度の工作物硬度が最適である.この条件であれば,生材をドライ加工する場合よりも工具寿命が延長できる可能生がある.一方,加工時間の短縮には,HRC55以上が最適といえる.これは,HRC55以上はほぼ実用強度であり,加工後の熱処理および再加工が不要になるためである.このように,最適な工作物硬度について議論した研究はこれまで無いと思われる.本研究成果によりドライホブ加工の普及が進み,高精度歯車の大量生産が可能になると期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,研究計画の熱処理後ドライホブ加工の実験,ドライホブ加工3Dモデルの作成,加工メカニズムの解明を行った.また,平成27年度に予定している超音波ドライホブ加工装置の開発に着手し,設計を進めている.超音波ドライホブ加工装置は,メーカーと連携して行う必要があるため,早めに着手すべきと考え,実行している. 遅れている点としては,現実に合致する力学モデルが得られていないこと,応力解析で説明できない実験結果があることが挙げられる. 結論として,平成25年度の計画をおおむね実行しつつ平成27年度まで見通して研究を実施しているため,評価を「おおむね順調に進展している」とした.今後は得られた結果を発表し,論文投稿していく必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
研究内容の論文化が遅れているため,速やかに論文投稿および発表を行う. 歯車加工の力学モデル構築については継続して研究を行うが,同定が困難であることがわかっている.また,切りくずが加工に与える影響など,モデル化できていない部分もある.対策として,より単純な形状の工具での同定,物理モデルの変更などが考えられる. 平成26年度の研究計画では歯車の性能評価を行うため,歯車の衝突振動モデルの同定が必要になる.衝突系は非線形系であり,これも同定が困難である.まずはバウンシングボール等の比較的単純な衝突系について同定を行い,歯車の衝突振動モデルの精度を高めることが必要である. 平成27年度の超音波ドライホブ加工機の開発には,ホブ盤メーカーの協力が欠かせない.今後,ホブ盤メーカー,研究者,技能者らとの協力関係を蜜にし,より良い歯車の製造装置の開発に向けて研究を進める.
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